都市部でも進む「路線バス廃止・減便」の大問題 給料安く負担大、運転士不足に陥るのは当然だ
たしかに筆者が欧州で乗ったフルフラットの路線バス車両は、後輪上の座席がかなり高い場所にあった。さらに日本のように発進の前に乗客に着席などを促すようなアナウンスはなく、ドアを閉めるとそのまま走り出していた。
筆者はアナウンスがなくてもよいし、後輪上の座席の前には手すりがあったので床に転げ落ちる恐れは少なく、これで大怪我をするなら乗客の責任ではないかと考えたが、日本ではとにかく乗客第一の風潮があるようだ。
重労働なのに給料が安い
このエピソードからも、日本のバスの運転士が心身ともに重労働を強いられていることがわかる。にもかかわらず給与は安い。これではなり手が少なくなって当然だろう。
厚生労働省の「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」によると、2021年のバス運転者の年間労働時間は2232時間で、コロナ禍で減少したにもかかわらず、全産業平均(2112時間)より長かった。また、年間所得額は404万円で全産業平均(489万円)を下回った。
一連の流れを生んだきっかけの1つに、2012年に大阪市が、当時は市営だったバス運転士の年収を4割もカットしたことがあると考えている。
在阪の大手私鉄系バス会社の最低水準に合わせる引き下げとはいえ、4割というのは普通は考えられない数字だ。しかし当時は市営バスの運転士は高給取りというイメージがついており、多くの人から歓迎された。
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