「下剋上球児」野球ドラマの定番を覆す設定の意義 主人公がまさかの無免許教員で自首という展開
『下剋上球児』主演の鈴木亮平は、映画『HK 変態仮面』(2013年)にはじまって、『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)やドラマ『エルピス‐希望、あるいは災い‐』(2022年 カンテレ)などで、清いだけではないアクの強い個性的な役をさまざま演じているとはいえ、不正教師よりも、その鍛え抜かれた身体に見合った、健康的なさわやかな高校野球の監督のほうが似合っているように感じる。
同じ日曜劇場で映画化もされ大ヒットした『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』の鈴木亮平はクリーンすぎる人物で、そっちのほうがやっぱり安心する。
それでも、あえて、無免許教師設定を入れたわけを想像すれば、これまでの野球ものとは一味違うドラマにしようと思ったとしか考えようがない。日曜劇場は、このところ、全盲のFBI捜査官(福山雅治)が主人公の『ラストマンー全盲の捜査官―』や、海外ロケも多用した『VIVANT』と新機軸が続いている。新機軸というか、これまでのテッパン題材に、ほんの少しひねりを加えた作品群である。
「無免許医師」はドラマや映画で定番
『下剋上球児』は、弱小野球部の奮闘記という定番に、罪を背負った教師をプラスしてみたのだろう。無免許といえば、『ラストマン』の前に放送していた『Get Ready!』は未認可で医療活動をしている闇医者のドラマであった。
腕は抜群にいいので、法外な医療費を請求しても仕事が成立するという、闇医者エンタメの元祖は、手塚治虫の『ブラック・ジャック』である。笑福亭鶴瓶が無免許医師を演じた『ディア・ドクター』(2009年)なんていう映画もあった。
無免許医師ものは当たり前に存在しているのだから、無免許教師ものもあってもおかしくはない。重要なのは、優秀か、そうではないかだけ。そもそも、いい大学を出たとか、資格試験に通ったとかいう後ろ盾があるからといって、皆、必ずしも優秀とは限らない。技術や知識があったとしても、それをどう使うのか。心が悪であれば、宝の持ち腐れになる。そういう意味で、ブラック・ジャックも『Get Ready!』の主人公(妻夫木聡)も支持される。
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