「下剋上球児」野球ドラマの定番を覆す設定の意義 主人公がまさかの無免許教員で自首という展開

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異色の高校野球ドラマ『下剋上球児』には原案がある。同名のノンフィクション『下剋上球児』(菊地高弘/カンゼン刊)で、10年連続、県大会初戦敗退の弱小校かつて県内で一番対戦したくない“荒れた高校”だった。

それがなぜ甲子園に出場できたのか、いくつもの奇跡を記したものだ。そこに無免許教師の奇跡も書かれているのかといえば、存在しない。教師・南雲の設定はドラマのオリジナルなのだ。

勇気がある「ダークな設定」

『下剋上球児』の公式サイトには(原案から)「インスピレーションを受け企画しました」とある。ドラマは、ロケを多用し、抜けのいい風景が心地よく、試合のシーンは中継のように臨場感たっぷり。

主人公も実直で、的確な判断で野球部を導き、実に頼もしい。ところが、彼は教員免許を持っていない偽教師という、こんなにもダークな設定を付与するとは、ものすごく勇気あるインスピレーションである。

不正をしているとはいえ、南雲は生真面目で誠実な人物。それゆえに追い込まれて教師になりすまし続けていたといえるだろう。が、やむにやまれぬ事情があったとはいえ、従来、生徒たちが何か問題を起こしたら、試合に出られなくなる。関わっていた教師の罪も問題になるだろう。

地方大会の1回戦に負けたことをきっかけに、教師をきっぱり辞めて、潔く自首することを決意する(ここまでが第4話)。これで勝ち進んでしまっていたら、大問題になることは火を見るよりも明らかだ。落ちこぼれた野球部員たちがどんどん1つになって、まっすぐ純粋に野球に向かっていく中で、主人公の不正が明るみに出たときの生徒たちの落胆を考えると、視聴者としてはしんどい。南雲が実直そうな人物だけに余計に。

南雲の不正を知っていた者の罪はどう問われるかも気になる。この重い問題を解決しながら、甲子園に出場するまでを描くことができるのかーー。

主人公の不正への戸惑いは、前作『VIVANT』 で堺雅人扮する主人公が悪事を働いた同僚をさくっと処刑してしまったときにも見られた。日曜日の夜、ゆったりテレビを楽しみたい視聴者としては、主人公は正しくあってほしい。悪いことはしないでほしいものなのだ。

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