世界から30年遅れ、精神科医が警鐘「日本版DBS」で子どもの性被害は防げない 依存性高く累犯つながりやすい性犯罪防ぐには

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福井氏は、日本版DBSは「一般の人に問題意識を広げる啓蒙的な意味はあっても、効果は薄く、再犯は減らないだろう」と見る。

「DBSは性犯罪者を監視し排除することで再犯を抑止しようという方法で、海外では1980年代に始まったものです。その究極はアメリカ・カリフォルニア州の『ミーガン法』でした。これは性犯罪者の住所や犯罪歴などをホームページに公開し検索できるようにしたものです。しかし、世界的には監視と排除では再犯は防げないという見解が主流となり、現在は治療も含めた社会復帰に対策はシフトしています」

一方、学校の教員に向けては、2022年4月に「わいせつ教員対策新法」が施行された。それにより、児童生徒への性暴力等で懲戒免職となった教員の復職を厳しく制限する仕組みや、教員免許の失効者の情報をまとめたデータベースの運用が始まっている。

対策としては十分なのだろうか。「DBSと同様、監視・排除を軸とした対策は、先ほども言ったように効果は薄いのです。その意味において、新法でわいせつ教員が減少するとは思えません」と話す。

なぜなら、利用を義務づけたとしても「子どものいる場所」はなくならないからだ。前科のみが対象で不起訴や懲戒を含めないため、教員を免職になっても学習塾や家庭教師で教えることができる。そこで性犯罪を犯し教育現場から排除されても、子どもと接するほかの業種に再就職すれば、そこで再犯の可能性もある。

いくら監視・排除しても「別の場所に被害者が生まれるだけ。1つの職業における対策ではなく横断的な仕組みが求められています」。自分の職場・職種にさえいなければいい、ではすまされないのだ。

加害者をなくす対策こそ必要

では、子どもへの性暴力を防ぐために何が必要なのか。

それは加害者治療と社会復帰支援だと福井氏は言う。福井氏は「被害者を生まないためには加害者をなくすしかない」という考えの下、2011年にNPO法人性障害専門医療センター(SOMEC)を設立。性嗜好障害などの治療、犯罪者の精神鑑定も行っている。

「性犯罪者の治療は大きく分けて2つあります。1つは認知行動療法です。人の考えや感情に働きかけて行動を変えていくものです。加害に至るまでの段階で歯止めをかける、例えば子どもの集まる時間帯に外出しない、などと自分で行動をコントロールできるようにするもので、これは治療において必須です。

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