消費の回復も鈍い。不動産不況で家計資産の7割を占める住宅の価値が下落しているのが、マインドに響いている。これに加え、家計は所得の伸びが今後も鈍化することに懸念を持っている。都市部の家計可処分所得の前年同期比伸び率はコロナ禍前の2019年の7.9%から2023年1~9月は5.2%に低下した。家計が消費に慎重になるのも無理はない。
成長率が、上海の都市封鎖などにより3%と失速した2022年の低いレベルから、今年は5%に回復するとしても、2年間平均で見れば4%の成長にすぎない。この勢いでは、2024年の成長は4%台前半となってもおかしくない。実際、国際通貨基金(IMF)は10月、来年の中国経済の成長見通しを7月時点の4.5%から4.2%に引き下げた(11月7日に4.6%へ上方修正)。
特別国債発行の経済効果が表れるのは主として来年だ。1兆元は中国のGDPの0・8%に相当する。政府としては、特別国債発行によって成長の大幅な減速にブレーキをかける狙いだろう。
10月19日、筆者もパネリストとして参加した東京─北京フォーラムの経済分科会において、朱光耀・元財政部副部長は、「2024年のGDP目標を5%に設定すべきだ」と発言した。10月下旬、盛松成・元中国人民銀行調査統計司長も「2024年も5%程度の成長はまだ可能だ」と発言している。
2024年の成長目標の設定は、12月の中央経済工作会議で議論され、2024年3月の全人代で正式決定されるが、政府は、2024年も2023年と同じ5%程度の成長を目指そうと考えているのではないか。
今回の特別国債1兆元は、すべて中央政府の債務となるが、全額が移転支出(日本の地方交付税交付金に当たる)によって地方政府に配付される。地方財政が苦しい中で、中央が負担することは合理的だ。
やっと財政拡大に乗り出した
筆者はかねて、家計や企業のコンフィデンスが弱い状況では、金融緩和の効果は限定されるため、財政拡大が必要と考えてきた。これまで、スローガン中心で実弾の伴わない景気対策が多かったが、遅まきながらも財政拡大に踏み出したことは好材料だ。
もっとも現在の景気の弱さの根本原因である不動産不況は相変わらず続いているほか、その影響もあって地方債務問題も深刻化している。今後どんな対応策が打たれるのかが注目される。
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