工学院大附属中高の英語教諭が実践、非認知能力を養う「映像制作」授業の中身 就職と主婦を経て取り組む「生涯学習者の育成」

自立した学習者を育て、適切な評価や指導も可能になるツール
工学院大学附属中学校・高等学校教諭の中川千穂氏が、英語科教諭として授業にICTを活用し始めたのは、同校に赴任した2016年のこと。教育現場でのICT活用が加速したコロナ禍よりも前から取り組んできたことになる。同校が方針として英語とICTを強化していくタイミングだったこともあり活用を始めたが、使っていくうちにいろいろなメリットに気付いたという。
「ICTを使うと楽ですよね。もちろん紙には紙のよさがあって、紙の使用をやめたわけではなく、何を使って学ぶかも生徒たちに任せています。でも、ICTを使ったほうが多くの生徒に一気にアクセスでき、効率的にいろいろな授業ができる点がすごくいいなと思っています。また、テクノロジーに親しみのある世代の生徒たちにとって、ICTは自分で調べて使ってみるということがやりやすいツールなので、自立した学習者を育てるうえでも最適なものだと感じています」

工学院大学附属中学校・高等学校 英語科教諭、英語科主任、インターナショナルクラス担任
Round Square Rep, Cambridge International School Counselor/ MIEE(Microsoft Innovative Educator Experts)/ AEL(Adobe Education Leader) IB English B, CELTA (Pass with all A)/ 文部科学省認定英語教育推進リーダー/ 2019 Cambridge English School Competition 最優秀賞受賞
中川氏は現在、高校2年生に英語を教え、インターナショナルクラスで担任をしているが、すっかりICTが授業の中に溶け込んでいる。
生徒たちがブレーンストーミングをする際はメモ書き用にMicrosoftのOneNoteを使ったり、GoogleのJamboardで生徒たちの意見やアイデアを共有したり。毎年11月に開催される小説執筆イベント「NaNoWriMo」のウェブサイトが提供する執筆フォームを使って英語で小説を創作する、電子書籍で英文を読む、AdobeのCreative Cloudで英語のポスターを作る、といった授業も行っている。
「とにかくICTツールはいろいろなものを試してきましたが、データでいろいろなことが可視化できる点もいいですね。例えば、オンラインのワークブックは生徒たちの学習の進捗状況が一目でわかります。話し合いを定量的・客観的に分析できる『ハイラブルディスカッション』というツールを使ったら、ある生徒は発言が少ないものの級友としっかり協働していることがデータから見えてきたことも。適切な評価や指導がしやすくなる点も、ICT活用の大きなメリットです」
「映像制作」の経験は「非認知能力」を育てる
中川氏はユニークなPBL(Project Based Learning)も行っている。きっかけは、2017年の研修旅行の事前学習だった。広島県に行くので平和について考えてもらいたかったが、中学生にその真意は伝わりづらい。そこで、平和をテーマに5人前後のグループで映像を制作することを課題として与えたという。