ネットバンキングの利用も実現、「学校事務職員」が仕掛ける働き方改革の中身 「情報窓口」のポジションを生かした提案が可能
「思いがありながらも疲れ切っている先生を何人も見てきましたし、頑張り続けて体を壊してしまう先生も。学校がこれからも子どもの夢を育てる場となり、先生方が教育への思いを持ち続けられるようにするためにも、学校をウェルビーイングな職場にして支えたいと思ったのです」
働き方改革の推進を支える「4つのR」とは?
具体的に踏み出したきっかけは、事務職員研修会や事務の共同実施などを通して、「教員が子どもと触れ合う時間を確保し、学びを支えていくこと」が、学校事務職員の大きなミッションとなってきていると知ったからだ。
「私が2018年度に赴任した本校は、栃木県教育委員会から『事務処理の効率化に関する研究実践協力校』の指定を受けており、共同実施の加配事務職員が配置されていました。また同年度に那須町教育委員会が文部科学省による業務改善アドバイザー派遣事業を受け、町内の事務職員が中心となって町小中全校に関わる業務改善を進めたことなども大きな契機となりました」
そのとき、町内の事務職員らと話し合って導き出したのが下記のキーワード「4つのR」だった。
・Rooting(応援):教職員の校務を支援するシステムを構築・導入する
・Reduction(削除):学校の業務、会議、諸行事などの削減を検討する
・Refresh(回復):教職員の健康保持と増進に向けた職場環境をつくる
・Relation(継承):教職員の経験の伝達と次世代の学校づくりを担う人材の育成
この4つのRに基づき、町内小中学校の事務職員らと文書分類項目やファイル名の統一化について協働で取り組んだ。「こうした改善が形になっていくことが、次へのモチベーションとなりました。4つのRは今も私の働き方改革推進の基礎となっています」と濱岡氏は語る。
20年度には、同校が栃木県教育委員会から「業務改善推進者研修の業務改善モデル校」に指定され、その推進者として濱岡氏が指名された。
「先生方との協議の中で、事務職かつ教育行政職としての視点や、総務・財務に精通する立場から述べた意見が活発な議論を生み、学校の働き方改革を進める自信につながりました。また、研修講師を担当してくださった『先生の幸せ研究所』代表の澤田真由美さんが『幸せ先生を増やしたい』と全国で活動されている姿に感銘を受け、先生方がウェルビーイングな働き方ができる職場づくり、事務環境の改善、ICT化を活用した支援にさらに力を入れて取り組むようになりました」

「口座振替化」と「インターネットバンキングの利用」を実現
那須中央中学校での改革としては、まず学年費やPTA会費の口座振替化に着手した。着任した2018年4月、1学年主任の教員から「現金で集めた学年費を積む通帳を作りたいのですが、どうやればいいですか」と相談されたことがきっかけだ。
町内の2つの中学校が統合されてできた同校は当時、開校2年目。話を聞くと、統合後の1年間は、学年費などの集金方法が整理されず、校内規定もないまま会計処理されていた。学年会計に事務職員が関わっていなかったことも判明。各学年主任が通帳を作り、自ら現金で徴収し、学年費は銀行に行って口座に入金、PTA会費は事務職員に渡していたのだ。