戦争はなぜ起こるのか、「ゲーム理論」で考える 『戦争と交渉の経済学』『母の壁』など書評4冊

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ブックレビュー『今週の4冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『戦争と交渉の経済学 人はなぜ戦うのか』

・『母の壁 子育てを追いつめる重荷の正体』

・『コンビニオーナーぎりぎり日記 昨夜10時からワンオペ勤務、夫が来たら交替します』

・『イラク水滸伝』

『戦争と交渉の経済学 人はなぜ戦うのか』クリストファー・ブラットマン 著
『戦争と交渉の経済学 人はなぜ戦うのか』クリストファー・ブラットマン 著、神月謙一 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・大阪大学教授 安田洋祐

戦争はなぜ起こるのか。どうすれば平和を維持できるのか。戦争が身近な脅威となりつつある今、その答えを世界中が求めている。紛争地域のフィールド調査をライフワークとする著者は、駆け引きを数理的に分析するゲーム理論の考え方を土台に、この難問に正面から挑む。理論と実証・実践のバランスがよいユニークな大著である。

1つの戦争の裏に1000の回避 開戦より望ましい「交渉領域」

本書でまず驚かされるのが、「選択バイアス」に対する鋭い指摘だ。戦争の原因を探るとき、私たちは実際に起きた武力衝突にばかり目を向けてしまう。しかし、「現実に起きた1つの戦争の裏では、1000の戦争が話し合いや譲歩によって回避されてきた。交渉と戦争は、求めるものを手に入れるための2つの選択肢なのである」と著者は説く。

戦争が起こるのは交渉が失敗した場合で、実は稀(まれ)な出来事にすぎない。よって戦争勃発のメカニズムを説明する論理は、多くの戦争が未然に防がれていることも同時に説明できなくてはならないのだ。

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