子ども追い込む「エデュケーショナル・マルトリートメント」が日本で起きる訳 「勉強していい学校に行っておかないと」の影響

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子どもの権利を考えるに当たって、自身の子ども時代を思い出してみるのもいいですね。多忙に生きている大人たちは、自分のことで精いっぱいで、子どもの気持ちを受け入れるのが難しいときもあるでしょう。また、子どもの要望をすべて受け入れ、放置することがよいわけでもありません。必要なのは、子どもの意見や気持ちを聞くだけでなく、大人が知っている情報を伝え、一緒によい解決策を探していくこと。その際、子どもが大人を信頼し、安全な関係性の中でやり取りできることが重要です」

自分にない価値観と出合い、体で感じる

とはいえ、「これが当たり前」と思ってきた大人にとって、価値観を変えることはなかなか難しいだろう。

「価値観は簡単には変わりませんから、転換できない自分を責めないでください。今まで自分が得たものとは違う情報をくれる本、人と出会うことも有効です。私はほかの国で暮らし、自由に生きている人と過ごす中で自分を変えることができました。1カ所にとどまって頭で考えていても変わりませんから、いろいろな人と一緒に体を動かしてみる経験も大切ですね。すると、『子どもにこんな言い方をしていたんだ』などと自分で気づきますから」

こうした問題に対する意識を持つ教員も増えている。だからこそ、古い価値観のままの環境の中で孤独感を感じている人もいるのではないだろうか。

「変わり始めている人たちは増えています。学校や教育の世界以外も見てみましょう。『教育改革の旗手になる!』とか『ICTを使った探究学習で進学率を上げよう!』といった競争の方向に向かってしまえば、行き先は前と同じになってしまいます。競争に勝って幸せそうに見える人ではなく、競争の世界から離れてもなぜか幸せそうに生きている人の隣に座ってみてはどうでしょうか」

子どもの権利を考え、大人と子どもがお互いの情報や意見を交換しながら解決策を探る。そうすることで、かつて子どもとしてマルトリートメントな社会の中でサバイブしてきた大人が自身を振り返り、癒やし、新たな未来をつくることにつながるだろう。

(文:吉田渓、注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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