「つまらぬ受験勉強したくない」、大学の"飛び入学"が救う才能と制度の難題 わずか10大学、拡大には高校教員の理解も必要

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ダイバーシティーやインクルージョン実現が社会的な価値観として広まる中、それぞれの能力や適性に応じた教育への期待が高まっている。その1つが大学の「飛び入学」制度だ。あまり知られていないが、実は日本でも25年前に制度化されている。どんな高校生が受験し、入学後はどう学ぶのか。また、日本で飛び入学が広がらない理由とは。日本で初めて飛び入学を導入した千葉大学の取り組みから、現状と課題を探った。

専用席で個別指導、大学負担の海外語学研修に経済支援も

松浦彰(まつうら・あきら)
千葉大学 理学部・大学院理学研究院 教授
先進科学センター長
(写真:本人提供)

大学への「飛び入学」は、特定の分野で特に優れた資質を持つ高校生が、高校卒業を待たずに大学に入学できる制度だ。目的は早期に大学入学の機会を与え、その才能を伸ばすこと。千葉大学では1998年に全国に先駆けて工学部で導入され、現在は理学部、工学部、情報・データサイエンス学部、園芸学部、文学部で、飛び入学制度「先進科学プログラム」の選抜が行われている。プログラムの特色を先進科学センター長の松浦彰教授はこう語る。

「未来の社会課題を解決する人材育成のため、特定の能力のある高校生を選抜し、大学の学習・研究環境での少人数教育を特色としています。飛び入学の学生には1年次から専用の学生室と机を設けており、教授と異次元の距離感で議論を重ねることができます。担任教員やカウンセラーとの個別面談で早期入学への不安解消を支援したり、入学金免除・独自の奨学金制度といった経済支援もあります」

千葉大学の飛び入学の学生は、各学部・学科のカリキュラムに並行して、研究の土台となる基礎知識や技術を身につける「先進科学セミナー」を受講する。新入生に合わせて毎年内容が組み直される少人数授業だ。また、第一線で活躍する研究者と交流できる「オムニバスセミナー」や、世界で活躍するために必須の英語力アップのサポートとして海外語学研修も受けられる。費用は大学が負担する。研究室には通常より1年早い3年次から所属できるが、3年次以降は研究目的の海外留学が可能で、期間も柔軟に組み立てられるという。

千葉大学生物学先進クラス1年前期の時間割例
出所:松浦氏の講演資料を基に東洋経済作成

大学院進学率83.3%、進路は研究員から起業家まで多様

石井久夫(いしい・ひさお)
千葉大学 先進科学センター 教授
(写真:本人提供)

2023年3月までの卒業生は84人。うち大学院進学率は83.3%で、博士号取得者が21名、大学等の教員が6名だ。公的機関や民間企業で研究職に就く卒業生も多いが、中には工学系から医学部学士入学、ベンチャービジネスで起業といったケースもある。同センター専任の石井久夫教授は、飛び入学生の進路や適性について次のように述べる。

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