「つまらぬ受験勉強したくない」、大学の"飛び入学"が救う才能と制度の難題 わずか10大学、拡大には高校教員の理解も必要

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「飛び入学」が国内に10大学しかない背景

実際、飛び入学の制度を実施しているのは千葉大学を含めて国内で10大学とわずかだ。このほか、過去にもう2つの大学が導入したのちに募集を停止している。文科省の調べでは、2023年度5月現在の飛び入学での累計入学者総数は152名とごく少数で、うち約7割を千葉大学が占める。

理由の1つに、大学側の受け入れ体制が整わないという点がある。「とくに優れた才能」を伸ばすには、単に1年早く入学させるだけではなく、個別化したプログラムや指導が必要だ。千葉大学の先進科学プログラムが、当時「特別な教育」として満を持して創設されたこともあり、他大学にとって「ハードルを上げすぎてしまったかもしれない」(松浦氏)というのも正直なところだ。

そもそも飛び入学制度の創設を示した1997年の中教審答申において、 同制度は「例外措置」であり、

▽単に大学に入学するためだけの手段に用いないこと
▽いわゆる「受験エリート」が有名大学を受ける機会を拡大することに利用されないこと
▽大学側が優秀な学生の「青田買い」として利用するためのものであってはならないこと

 

と釘を刺している。進路変更などで万が一大学を中退した場合、最終学歴が「中卒」となってしまう問題も長らく放置されていた。この点は2022年度以降、審査により高校卒業資格を与えられるように変更されている。

とはいえ現在の日本は、入学や修学の年齢制限を緩和する「早修」に慎重だ。「特定の分野に特異な才能のある児童生徒」への指導や支援のあり方を議論する文科省の有識者会議は、「義務教育段階では特異な才能があることで生じる困難の理解と解消が先」だとし、早修推進の立場を取っていない。そもそも「とびぬけた才能」とは何なのか、どう定義すべきか、という議論もあった。結局のところ「飛び入学」を巡る現状は、子ども一人ひとりの力をどう伸ばしていけばよいか、というわれわれの教育観を問うものでもあるようだ。

(文:長尾康子 編集部 田堂友香子、注記のない写真:nonpii / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事