激しい荒れと異なる「令和の学級崩壊」の質的変化、予防のためのポイント3つ 特別な支援を必要とする子の増加との関係とは
そして、職員室は教室と地続きですから、職員間の関わりが、教員と子どもとの関わり方のロールモデルとなります。職員間の不適切な関わり方が、教員と子どもとの関係に反映することは間違いありません。画一的に、何かを押し付ける校長のリーダーシップの質を変えることが、学級崩壊を防ぐ1つのポイントです。
2つ目は、教員のマインドを変えることです。以前の学校は「単一規範」によって、「みんなに同じ指導をする」ことを標榜していました。それを、多くの子どもたちの発達を保障するために「一人ひとりの特性に合った指導」をしようと、学校は子どもに対する指導方針を転換したわけです。
ところが、これにはまだ多くの課題があり、その課題は現在も解決されていないと、筆者は考えています。では、どうすればよいのでしょうか。
それは、何より教員のマインドを変えることによって解決できるはずです。「一人ひとりの特性に合った方法を選んだり提案したりするのは、教員ではなくて子どもだ」としてみましょう。つまり、学習者が本当の意味で主体となった授業を具現化しようとしてみるのです。何が変わるでしょうか。次のような授業の導入場面を、思い浮かべてみてください。
子ども:「教室のどこで、やってもいい」なら、立っててもいいんですか?
教員:あなたがゴールに到達できて、ほかの人の学びを邪魔しなければ結構です。
子ども:解答を見ながら、やってもいいですか?
教員:今日のゴールに到達できれば、つまり、問題が解けるようになるなら結構です……。
いかがでしょうか。特別な支援が必要な子も、ないと思われている子も、こうした授業であれば、全員が満足して、主体的に学べる可能性があるのではないでしょうか。こうした誰もが学びやすい環境を具現しようとする、例えば「学びのユニバーサルデザイン」の考え方※2は、近年学校現場で注目されているフレームワークの1つです。
「一人ひとりの特性に合った」学習の仕方を教員が選び、一方的に提供する限り、子どもや保護者の感じる不公平感を取り除くことは難しいです。学習の目的や目標を教師が明示したうえで、子どもたちが自分で学び方を選べるような環境を用意する。それこそがこれからの教員の役割。そして、今の教員に必要なマインドではないでしょうか。
※2 トレイシー・E・ホール、アン・マイヤー、デイビッド・H・ローズ 編著 バーンズ亀山静子 訳(2018)『UDL 学びのユニバーサルデザイン』東洋館出版社
3つ目は、異質な教員がチームで指導に当たることです。子どもにも特性があるように、教員にも特性があります。教科指導が得意な教員もいれば、生徒指導で力を発揮する教員もいます。また、子どもから話を引き出すことが得意な教員もいれば、何かを説得するのが得意な教員もいます。
おのおのの特性を持った教員が、単独で学級運営を行ったり、トラブル対応をしたりすれば、どのようなことが起きるでしょうか。当然、得意ではないタイプの指導をしなくてはならないときがあり、そのときは成果が十分に上がらないというようなことが起こります。
とくに小学校教員は、担任が生徒指導のすべてを担うというようなことが、慣習となっています。これでは、さまざまな子どもたちがいる教室のトラブルを、子どもたちの成長に結び付けることは難しいです。
そこで、複数の教員で事前に役割を分担しておきながら、学級で起こるトラブルの解決に当たることにします。トラブルが起きたら、子どもからの聞き取りや、その後の指導なども違うタイプの2人がペアとなって事に当たるようにします。
このとき、重要なことは、異質な教員でチームを形成して指導に当たるということです。「チーム学校」が、「足並みをそろえる」ことのように誤解され、チーム力を発揮できない状態になるのは、同質メンバーのチームを目指しているからにほかなりません。「一枚岩」という例えがありますが、それは同じ形のレンガを組み合わせるのではなく、形の違うパズルピースを組み合わせるべきです。違う形のものが、お互いに「かみ合っている」ほうが崩れにくいのです。
教員がチームとして、子どもたちの豊かな学びを保障するには、教員が異質であることが認められ(むしろ求められ)、その教員らしい働き方が保障されることが何より肝心です。
(注記のない写真:ふじよ / PIXTA)
執筆:北海道公立小学校教諭 山田洋一
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら