アメリカで加速的に進む「親世代のビール」離れ メキシコのビールがシェア1位になった背景
アメリカでは、かつてないほど多くのビールにライムが添えられるようになっている。
メキシコのラガービール「モデロ・エスペシアル」が「バドライト」を抜いてアメリカで最も売れているビールとなる動きは、バドライトが4月にトランスジェンダーのインフルエンサーとのコラボレーションによって保守派からの反発に直面する以前から始まっていた。アメリカでヒスパニック系人口が着実に増加していることも、同様にすべてを説明する要素とはならない。
ここ10年の大部分においてモデロを成功に導いてきた要因には、アメリカの消費者の間で高価な輸入ビールを好む傾向が強まっていることや10年前の反トラスト(独占禁止法)政策、ヒスパニック系以外の若い消費者をメキシコのビールに引きつける効果的なマーケティング・キャンペーンなどが含まれる。
1位獲得は既定路線
「ビール業界関係者の多くはいずれモデロがバドライトを追い越すと考えていた」。6000以上のビール醸造業者を代表するアメリカの業界団体「ブルワーズ・アソシエーション」のチーフエコノミスト、バート・ワトソンは「そうなるのは確実視されていて、あとは時間の問題だった」と指摘する。
バドライトはおよそ20年間にわたって首位の座を守り続けてきたが、6月初めにその座を明け渡した。コンサルティング会社バンプ・ウィリアムズが分析したニールセンIQのデータによると、7月8日までの4週間でアメリカ国内の小売ビール売上高に占めるモデロのシェアは8.7%だったのに対し、バドライトは6.8%だった。
バドライトの陥落は、トランスジェンダーのインフルエンサー、ディラン・マルベイニーが4月1日にインスタグラムにバドライトのコンテストを宣伝する動画を投稿したことで始まった保守派主導の不買運動に続くものだった。バドライトを展開するビール大手アンハイザー・ブッシュ・インベブはその後、マーケティング責任者を2人解任、売り上げの急落を報告した。