AI研究者、東大教授・松尾豊が語る「生成AI」が教育業界に与えるインパクト 「変化の側に身を置くメンタリティー」が重要

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

世の中の動きがどんどん速くなっているので、より瞬発的に動いていくしかない。だからこそ、変化を嫌がらないこと、変化する側につねに身を置くというメンタリティーが、大人にも子どもにもこれからは重要になっていくでしょう。

「自分はこのスキルを身に付けたから大丈夫」だというマインドでは世の中で戦っていけなくなる。身に付けたスキルが通用しなくなったとしても、そういうものだと切り替え、つねに勉強しながら自分を時代の変化に合わせていく姿勢が大切になります。そうすれば、昔やってきたことが後になってから生きてくるかもしれません。

――松尾先生ご自身もAIの研究をされていて、「変化のスピードが速い」「自分も変わっていかなければならない」と感じられますか。

もちろんそうです。AIの研究も、あっという間に置いていかれますから、つねにアップデートしないといけません。OpenAIやGoogleがどうなるのか、自分の仕事がどうなるのか、この先のことはわからないというのが正直なところです。そう思って動くしかないのです。長期的にどうこう考えるよりも、とりあえず目の前のものを見ながら走ろうよ、という感じでしょうか。

「フラットな関係」で先生も生徒も一緒に学ぶ姿勢が大事

――学習指導要領改訂によって、問題発見力や課題解決力を重視した探究型の教育が進んでいますが、AIが進化する時代の中、その方向性は適切だといえますか。

適切だとは思います。ただ、私の研究室では、私自身も学生もそうなのですが、私が教えているという認識はないんです。むしろみんなで学んでいるという感覚です。とくに若い人たちは互いに教え合っています。スマホの使い方を若い人から教わるように、AIの新しい技術についても若い人から教えてもらったほうがいい。

つまり、従来のように「教える、教えられる」という関係が変わってきているのです。時代の流れが速くなっているので、昔勉強したことが役に立ちません。ですから、若い人たちで教え合い、大人も一緒に学ぶ。今、学校で行われている探究型教育についても、フラットな関係で先生も生徒も一緒に学ぶという姿勢が大事になってくるのではないでしょうか。これからは先生も学び続けなければならないのです。

――AIの進化が加速する時代において、教員にはどのようなスキルが求められるようになると思われますか。

今であれば、まずご自身でChatGPTを使って勉強してみてほしいと思います。新しい技術が出たら、とにかく使ってみて、使いながら教育がどう変わっていくのか試してよく考えていく。一度使えば、必ず見えてくるものがあります。賢い使い方や意外な弱点、可能性もわかってくるのです。そうやって試行錯誤を繰り返していくと、理解が深まるとともに新しい教育のあり方も見えてくるはずです。

(文:國貞文隆、撮影:筒井義昭)

東洋経済education × ICT編集部

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事