弱視の子も読みやすいよう開発、「UDデジタル教科書体」学校で活用が広がる訳 子どもたちの「個性や特性に合わせた選択肢」を
UDデジタル教科書体も、欧文シリーズや書き順を示せる筆順フォントなど、教員の教えやすさや教材の作りやすさを考慮した選択肢が用意されている。
「現在、教材を作るプロ向けのUD学参丸ゴシックを先生たちが使いやすいような形に開発中です。ロービジョンのお子さんはUDデジタル教科書体で長文を読むのはつらいと感じるケースもあるようです。そこで、文字を覚えるときには筆順や手書きの字形がわかりやすいUDデジタル教科書体を、長文を読むときには大きく見えるUD学参丸ゴシックをと、使い分けができるよう選択肢を増やしたいと思っています」
また、学校現場で得た知見をほかの分野に発信する必要性も感じているという。
「例えばデザイナーさんには特性に応じた組版の工夫の必要性などがあまり知られていないので、支援に関する情報を伝えていけたらと思っています。そのためには根拠が必要なので、認知脳科学なども突き詰めて学んでいきたいと考えています」
フォントの選択・活用を始め、それぞれの読みやすさに寄り添うUDの視点が教育現場に浸透すれば、これまで読むことの困難さを見過ごされてきた子どもたちの学びの可能性は広がるはずだ。

モリサワ ブランドコミュニケーション部広報宣伝課
女子美術大学短期大学グラフィックデザイン科を卒業後、ビットマップフォントの草分けであるタイプバンクに入社。32年間、書体デザイナーとしてさまざまな分野の書体を手がける。2007年ごろから「BIZ UD明朝/ゴシック」「UDデジタル教科書体」のチーフデザイナーとして企画・制作に従事。17年モリサワに吸収合併後、書体の重要性や役割を普及すべく、教育現場と共に UDフォントを活用した教材配信、講演やワークショップ、教育系の雑誌や学会誌への執筆、取材対応など広く活動中。著書に『奇跡のフォント 教科書が読めない子どもを知って―UDデジタル教科書体 開発物語』(時事通信社)
(文:吉田渓、注記のない写真:尾形文繁撮影)
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら