オフィスづくりのプロが考える、教員の生産性を上げる「職員室改善」のヒント 「ABW」の要素でコミュニケーションが変わる
※3 チームごとにエリアを決め、そのエリア内で自由に席を使うこと
「教員が健やかであること」がよりよい教育につながる
一方で、主体的・対話的で深い学びを実現するにはどのような空間が必要か。ポイントとしては、「児童生徒にとって、居心地のよい学びの居場所をきちんとつくってあげること」だと前田氏は言う。
「身体的・心理的安全性や生理的な快適さはもちろん重要ですが、コミュニケーションを育む工夫も必要でしょう。例えば米国では、廊下にファミレス型のテーブルとソファを置くなど、対面で話せる場所を各所に設けている。また、アクティブラーニングの場では、ヒエラルキーを生む四角い机よりも、共感を生む丸いテーブルのほうが向いています。四角い机しかないなら、それを円形に並び替えるだけでも違います。そうやって、その空間で何をさせたいかを考え、居場所をつくってあげることが大切だと思います」(前田氏)
教員が家具を活用するという方法もある。実際、キャスター付きのスタンディングデスクを上手に動かしてアクティブラーニングを行う教員や、カスタマイズできる箱型のツールを用いて「自分たちの空間を自分たちでつくる」という体験を児童生徒たちにさせ、主体性や創造性を育もうとする教員もいるという。

しかし、そうした授業改善の意欲や余裕を生み出すものは、やはり働き方改革だと森田氏は言う。「先生方が健やかでいることがよりよい児童生徒の指導や教育につながると考えています。違う視点から解決できることもありますので、われわれのような学校外の力も活用しながら働き方を変えていっていただきたいです」(森田氏)
空間づくりは予算やプロの力がないとできないことも多いが、ABWの要素を取り入れた配置変更のポイントは、ウェルビーイングな職員室づくりの参考になるのではないか。また、フリーアドレスの検討はさておき、「物の整理」と「ICTの活用」は働き方改革を進めるうえでどの学校にも重要なことだろう。物の整理については関連記事(整理収納のプロが語る、忙しい学校も今すぐ可能な「時短をかなえる片付け術」)が参考になるかもしれない。ペーパーレス化などの効率化も、文科省が情報端末とクラウドの活用を推進し、好事例も多く出てきている今、難しくはないはずだ。
・同社の調査研究データは「オフィスづくりのコラム」より引用
(文:編集部 佐藤ちひろ、注記のない写真:オカムラ提供)
東洋経済education × ICT編集部
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