オフィスづくりのプロが考える、教員の生産性を上げる「職員室改善」のヒント 「ABW」の要素でコミュニケーションが変わる

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「フリーアドレス」は学校に適しているのか?

しかし、「オフィスでのABWを現状の学校に導入するのは難しい」と森田氏は指摘する。確かに教員は授業があるので在校を基本としており、リモートワークが可能な学校も圧倒的に少ないため、働く場所を自由に選びにくい。

では、職員室をフリーアドレス(※2)にするのはどうか。企業では以前から導入が増加傾向にあったが、コロナ禍以降さらに増えているという。学校でもすでに導入しているところはある。

※2 固定席を持たず、空いている席やフリースペースを自由に使うスタイル

2018年の同社調査でも、フリーアドレスの効果として「コミュニケーションが増える」(39%)、「ペーパーレス化」(39%)などが上位に挙がっているといい、職員室でも対話の活性化や効率化につながるのではないだろうか。

ところが、森田氏は「一概に働きやすくなるとは言えません」と言う。何が問題なのか。

「フリーアドレスの基本はクリアデスク。帰宅時は片付けて机に何もない状態にする必要があります。当社もそうですが、フリーアドレスを導入する企業では、資料はデータ化し、どうしても共有が必要な紙類は共同収納に入れます。先生方は書類や個人情報をたくさんお持ちなので、ここのハードルは高いのではないでしょうか」

同研究所で学校施設の研究を担当する前田明洋氏も、次のように話す。

前田明洋(まえだ・あきひろ)
オカムラ ワークデザイン研究所 リサーチセンター
岡村製作所(現・オカムラ)入社後、空間デザイナーとして設計に従事。2008年より学校教育に関わる空間環境に関する研究業務を開始し、初等教育から高等教育までの一貫した教育環境について、新しい学びのあり方をプロポーザルする。国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学客員准教授

「例えば小学校の先生は、大きな定規など不定形の持ち物が多い。手作りの教材が山ほどあり、児童たちからもらった思い出の品などが机の引き出しや足元の段ボールに詰め込まれている場合も。物量の観点で言うと、フリーアドレスの導入は中学校や高校のほうがスムーズです。また、デジタル教科書を使えるようになりましたが、児童生徒の教材はまだアナログが多い。答案も引き出しに入れて鍵をかける状態が先生方は安心なようです。ICT化に課題のある現状からも、フリーアドレスはあまり適していないように思います」

また、フリーアドレスの導入がうまくいくかどうかは、物の整理とICT化のほか、「人的な要因」も大きいようだ。自席を“自分の城”だと感じている教員は、フリーアドレスに抵抗感を持ちやすいという。

「企業もその点は同じで抵抗感を持つ人はいるので、移転や改装を機に、ワークショップなどを通じて『オフィスをどう使うか』『どう協力し合うか』を皆で考えるステップを踏むことが多いです。学校もそこから始めるとスムーズかと思いますが、忙しくてその時間が取れないという課題もあるでしょう」(森田氏)

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