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ある地方で、町の有力者が集まった飲み会を取材していた時のこと。その様子を撮影していると、60歳ぐらいの男が近づいてきた。
「いいカメラ、持ってますね」
そう言って、私のカメラをしげしげと見つめる。
「カメラ、詳しいんですか?」
「ええ。まあ、年に数千万円、注ぎ込んでますんでね」
差し出された名刺には、製造業らしき会社名と、社長の肩書が記されている。
「部品の工場をやってましてね。2階はカメラに使ってます」
私の頭に大きなクエスチョンマークが浮かんだ。
「社長、それって部品と関係してるんですよね」
「いや、全然。趣味です」
「はあ。それに数千万って、すごいカメラがあるんでしょうね」
「まあ、カネがかかるのは、機材よりも撮影旅行です。毎年のようにゴビ砂漠に撮影に行ってましてね。現地の運転手や通訳、助手なんかが必要じゃないですか」
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