学校で「なぜ本を読むのか」のサポートが必要、子どもが本嫌いになる3大理由 いかに本を自分の武器として使うかを学ぶべき

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「読みたくない本を読まされた」という回答は、いわば読書教育が押し付けになっていることへの反発ではないか。評価されるから読書をする「ふりをする」、読書が自己のものになっていない。さらに、読書をするメリットが提示されずに、読書することを押し付けられていると捉えてしまうことで、本が嫌いになる子どもが増えているのではないか、と田口氏は考えているという。

そこで「読みたくない本を読まされる」のであれば、自分の好きの延長線上に本があることを知ってもらい、好きと本を結び付けるストーリーを一緒に考える時間をつくっていく。「なぜ本を読まなければならないのか」という問いに対する答えは100人100通りある。それが読書の多様性であり、それを教えるのではなく、みんなで考えていく時間をつくる。田口さんたちは、そんな「読書の時間」を全国各地の小・中学校で授業やワークショップとして実施している。

「若者の読書離れといわれて今年で46年目。この言葉は、1977年の東京新聞で初めて使われました。以来、その状況がずっと続いている。これまでの読書推進活動では、読書好きの子どもがさらに本を読むように、何冊読んだかという数で表現されることが多かったのですが、私たちは1冊の本を深く読むことを推奨しています」

小・中学校で「いかに本を自分の武器として使うのか」学ぶべき

2020年の大人を含めた読書世論調査(毎日新聞)では、1カ月に1冊も本を読まない人が初めて50%を超えた。つまり、すでに本を読まない人のほうが多いという現状がある。

一方で、どんな目的で本を読むかという問いに対する答えには、「楽しいから」「暮らしに役立つから」「勉強や仕事のため」などがある。この「楽しいから」を「娯楽的読書」とし、「暮らしに役立つから」「勉強や仕事のため」は「機能的読書」とすると、実は「機能的読書」は減少しておらず、「娯楽的読書」のほうが減少傾向にあるという。

「つまり本は社会に出てから役に立つということ。だから、いかに本を自分の武器として使うのかを小・中学校のうちに学ぶ必要があるのではないかと。これまで学校で読書といえば情操教育として行われ、図書館の本も創作ものが大半でした。学校図書館が従来どおり『読書センター』ならばいいのですが、今後『情報学習センター』としての機能を持たせるのならば、読書の仕方を学んで学び方を変えていく必要があります。例えば、コメについて学ぶなら、コメの物語だけでなく産業としてのコメ、食事としてのコメについて考えてみる。図書館のNDC分類を基に各ジャンルを満遍なく学ぶことが重要になります」

前述の読書世論調査によれば、本を読まなければいけない年齢として、圧倒的に多くの人が10~20代と答えている。とくに10代が7割と高い。10代は自分を知り、自分の考えを作る時期だ。だがインターネットでは、自分の考えと親和性のある情報しか読まない傾向が強く、自分とは異なる考えに触れないままに大人になってしまう可能性もある。

その点で田口さんは、第三者がつくり上げたものを読んで、その考えに賛成か、反対かを考える時間を10代の子どもたちが持つには、紙の本がやはり適しているのではないかと指摘する。

「今はSNSやネットで文章を読むことすら読書だと捉えている人がいます。要約されたものをスマホで読むのも読書。とくに10~20代では、この感覚が広がっています。これはこれで大事なことかもしれませんが、ネットで読むことと、本で文章を読むことの違いとは何か。そこを『読書の時間』を通して感じ、学ぶことも必要だと考えています」

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