世界に1冊の大切な本を「修繕する」という仕事 『書籍修繕という仕事』書評

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『書籍修繕という仕事 刻まれた記憶、思い出、物語の守り手として生きる』ジェヨン 著
書籍修繕という仕事 刻まれた記憶、思い出、物語の守り手として生きる(ジェヨン 著/牧野美加 訳/原書房/2200円/232ページ)
[著者プロフィール]Jae Young/書籍修繕家、ブックアート専門家。韓国の美術大学で純粋美術とグラフィックデザインを学ぶ。米国の大学院でブックアートと製紙を専攻。大学図書館付属の「書籍保存研究室」で働きつつ書籍修繕のノウハウを学ぶ。3年半で1800冊の修繕を担当した。

韓国・ソウルの「ジェヨン書籍修繕」作業室にはさまざまな本が持ち込まれる。ぼろぼろになった絵本。コレクター垂涎の雑誌のバックナンバー。祖父から父へ、その息子へと受け継がれてきた辞書。中には日記帳や手紙など「本」の概念をはみ出すものもあれば、『ハリー・ポッター』シリーズのペーパーバックのように、今も同じものを買うことのできる本もある。しかし、そのどれもが持ち主にとっては、世界に1冊きりの「本」に違いない。

復元でも修理でもない「修繕」

著者はグラフィックデザイナーとして勤めたのち渡米、大学図書館で働きながら本の保存と修復を学び、帰国して2018年に「ジェヨン書籍修繕」作業室を開いた。大学図書館時代、勤務は1日4時間までと決められていた。短いように思えるが、破れたページを「ちぎれた繊維の流れを一つひとつほぐしてつなぎ直す」ような作業に集中できるのは、それが限度ということだろう。そうでなくともこの世に1冊しかない本を預かるのは、並々ならぬ重圧のはずだ。

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