教職員95%「ウェルビーイング向上」、平方北小が活用した3つの科学的根拠 児童たちが主体的になり高学年の学力もアップ
その様子はオンライン取材中にも垣間見えた。「体育館で長縄跳びをするので、ぜひ一緒にやりましょう」と呼びかける校内放送が聞こえてきたのだが、中島氏によれば、これは6年生が「学校全体で遊びたい!」と企画したものなのだという。
「先週は1〜2年生と一緒に遊んだので、今週は3〜4年生を誘っているようです。このほかにも児童から『思いやり週間をもっとやりたい!』という希望があり、延長しました。先生たちが主体的に動くようになったら、児童たちも主体的に動くようになり発話が増え、『間違えてもいいじゃん! 頑張ろう』と学びに向かう姿勢も変わりました。県・市の学力状況調査で学力を伸ばした5・6年生が増えたのも、こうした変化によるところが大きいと感じています」
前述のアンケート調査でも100%が「今年1年子どもたちのウェルビーイングは上がったと思う」と答えており、教職員も子どもたちの主体性の変化を実感しているようだ。現在、遅刻や不登校はほとんどなく、朝食摂取率も上がったという。
「今までの学校教育は競争させることで力を引き出そうとして、振り落とされる人がいました。しかし、幸せを感じれば人間は力を発揮できるのです。私は先生も子どもも輝ける学校を本気でつくりたいと思っており、そのことを通じて教員がすてきな職業だということも広く伝えていきたい」と中島氏は語る。
保護者の理解や地域との連携も進み、夏の草取りボランティアも2021年度の75名から22年度は165名以上と倍以上の人が参加してくれるようになった。学校は毎年人が入れ替わり、校長も任期があるため、こうした連携の継続は難しい面があるが、「もし私が離れても先生たちがウェルビーイングな学校づくりを続けると言ってくれているのがうれしいですね」と、中島氏は笑う。
幸せは人によって基準も感覚も異なるものだが、教員と子どもが幸せを感じられる学校をつくりたいと願っている教育関係者は多いはず。「次期教育振興基本計画」の答申においてもコンセプトとしてウェルビーイングが位置づけられた今、同校のようにエビデンスに基づいた「ウェルビーイングな学校づくり」は、今後の学校教育を考えるうえで大きなヒントになるのではないだろうか。
(文:吉田渓、写真:埼玉県上尾市立平方北小学校提供)
東洋経済education × ICT編集部
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