日銀の「岸田リスク」は消えていないかもしれない 植田日銀で為替は「1ドル=120円」に向かう

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植田氏の過去の発言や行動、さらには書き物などに当たって、植田新総裁の金融政策を予想する手がかりを得ようとする動きが各所に見られる。エコノミストには、経済学の復習と同時に、レポートのネタになる、よい暇つぶしだろう。

今のところ推測される植田氏の政策的意見としては、(1)早期の金融緩和撤収や利上げには消極的、(2)長期国債の利回りを操作対象とするYCC(イールドカーブコントロール)には慎重ながらも批判的、という2点が浮かび上がる。

かつてと今とでは多くの前提条件が異なるが、過去の言動を手がかりに見た植田氏のイメージは、派手なまき餌(長期債やETFの大量買い入れ)をせずに、じっと釣り糸を垂れて(ゼロ金利を継続して)、魚が釣れるのを待つ(インフレ目標が達成されるのを待つ)、気の長い釣り人のような風情だ。「2%!」の大漁旗を掲げて出漁した「黒田船長」とは趣が異なる。

彼は、マネタリーベースの量を積み上げることや長期金利まで含めて期待に働きかけることの効果に対して積極的ではなさそうな点で、「リフレ派」とは呼べそうにない。かといって、きっかけを見つけたら利上げをやってみたいと考えるような、かつての速見優、福井俊彦元総裁たちのような、旧来型日銀マン的な「デフレ派」でもなさそうだ。

「YCC変更」でドル安円高の可能性

ただし、YCCに関しては、長期金利の上下の変動幅の拡大ないし撤廃、あるいは操作対象を10年債から5年債、2年債などに短期化するなど、何らかの変更を遠からず行いそうだ。

変更は、黒田総裁体制の最後の政策決定会合でサプライズ的な置き土産として行われる可能性があるが、この課題は植田総裁体制に持ち込まれて、年内のどこか程度のタイミングで行われることが「ありそうな将来」だ。

市場関係者にとって最大の関心事は、例えばドル円の為替レートの見通しだろう。大きくはアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)の動きによって、したがって同国のインフレや雇用と賃金などの動向によって左右されるのだろうが、同国のインフレが沈静化しつつある昨今の状況を見ると、「遅かれ早かれYCCを緩和する植田日銀」は、どこかの時点で円高をもたらす公算が大きいとみられる。

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