日銀の「岸田リスク」は消えていないかもしれない 植田日銀で為替は「1ドル=120円」に向かう

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だが、何とも気になるのが、2月6日付の日本経済新聞夕刊で「日銀総裁 雨宮氏に打診」と報じられたものの、その後に本人の辞退が伝えられた雨宮正佳氏の総裁就任固辞の理由だ。率直に言って、植田氏が総裁に選ばれた背景よりも、雨宮氏が総裁を断った事情のほうがずっと興味深い。

人事の問題なので真相はやぶの中だが、日本経済新聞(2月13日「サプライズの『植田日銀総裁』 国際性・専門性、世界の潮流」)で報じられている雨宮氏本人の言葉が大いに問題含みだ。記事は同氏の言葉を、以下のように報じている。

「緩和政策を実行してきた当事者中の当事者で、客観的に公正な見直し作業ができるとは思えない」

「岸田リスク」は先送りされただけ?

つまり、雨宮氏は、自分が緩和政策の当事者だったから、その見直しに自分はふさわしくないのだと述べている。

この発言は、副総裁だった雨宮氏が在任期間中も日銀の政策について「客観的に公正な」見直しができなかったと言っているに等しいことと、そもそも現在の政策をこれから見直すことが前提とされていることとの2つの点で重大だ。

前者も妙な話で「はい、そうですか」と看過するわけにはいかないのだが、経済とマーケットの今後が気になる読者にとって重要なのは後者の意味合いだろう。

例えば、「資産所得課税の見直し」というと「資産所得への増税」を意味するように、官僚用語で「見直す」は、単に見ることではなくて、「変更する」ことを意味する。

主語を「首相は」「首相官邸サイドは」あるいはその背後に存在する「財務省は」のいずれにすべきかを迷うが、日銀総裁の人選を検討したわが国の経済政策の中枢は、黒田東彦総裁の政策を大きく変更することを企図しているということではないだろうか。

「岸田リスク」は、実は少々先送りされただけなのかもしれない。

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