最新キャリア教育の傾向は「探究学習」とセット、「課題発見力」重視の実践例とは 67.8%「教員の負担」課題、時間不足でどう指導?
保護者の考え方も変化してきている
ほかにも、「高校生と保護者の進路に関する意識調査2021」(リクルートキャリアガイダンス調べ)の結果にはコロナ禍の影響で変化したと見られる項目もある。これまで、生徒が将来や進路について相談する相手は「母親・友人・父親」という順番だった。しかし最新の調査では「母親・父親・友人」の順に変わっているという。
「コロナ禍で家族との会話が増えたことが理由でしょう。改めて、両親の学生時代や就活の話を聞く機会にもなり、子どもも相談しやすくなったのかもしれません。
また、親の考え方も変わりました。直近でも新型コロナや戦争などさまざまなことが起こり、社会が今後どうなっていくかは大人にも予測がつきません。そんな中で親も、『勉強さえできれば生き抜いていける』という意識を見直し始めています。頭ごなしに『勉強しろ』と言うのではなく、子どもを尊重して『自分の好きな選択をしなさい』『自分で考えて決めなさい』という声かけが増えているようです」
実際、多くの大学が取り入れ今後も増加傾向にある総合型選抜入試では、「これまで何をしてきたか?」「これから何を学んでいきたいか?」が重要になってくる。そのためにも高校で自分の興味・関心に基づいた学びに取り組むことは欠かせない。
ただ、キャリア教育の一環としても捉えることが可能な、起業家精神やスキルを育む「アントレプレナーシップ教育」については、現在「導入・活用している」「導入・活用を検討している」高校はわずか18.1%。「導入・活用をしていないし、する予定もない」が過半数を占めていた。理由としては、「担当する教員の負担が大きい」「どうしたら実務経験者と持続的な関係を築くことができるかが課題」という不安の声が多いという。
そこでリクルートでは、「高校生Ring」というアントレプレナーシップを身に付ける参加型プログラムを開催している。自分の「半径5m」に目を向けて、自分が感じた問いからそれを解決するためのビジネスを考えるプログラムで、グランプリ・準ブランプリを取ったアイデアにはサービスの試作版を作るまでの人的支援が受けられる「プロトタイピングプログラム」を提供するようだ。

(写真:リクルート提供)
いずれにせよ、「キャリア指導の時間を増やす」ことが現実的でない以上、「各教科や教科外の時間において、日々少しずつ問いかけをし続けていくことも工夫の1つ」だと赤土氏は言う。その際は、他教科の教員や、進級した先の担任にも過去の成果や内容が受け継がれるよう、ポートフォリオを残したり、教員側が連携体制を整えることも必要だろう。
最後に赤土氏は、高校生や高校の教員へ向けて、「『半径5mの範囲』など、身近な課題を見つけることを起点に探究のサイクルを回す中で、自分の生き方やあり方を考え続けてほしい」と語った。「総合的な探究の時間」で取り組むテーマと各教科での学びが結びついたとき、生徒の日々の授業への関心はもちろん、進路選択への意識も高まるだろう。「キャリア教育」の今後に期待が高まる。
(文:酒井明子、注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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