税務調査が入っても確定申告しなかった人の末路 年収1000万円超のフリーカメラマンの事例

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そして、あの前回調査から数年後、再び黒いスーツを身にまとった男性が税務署からやってきました。前回の調査で事業を行っていることはわかっています。それから申告した記録がなければ、再び来訪するのは当然です。

実は、一度不正が発見されると、その後再び調査が行われる可能性は高まります。なぜならば、税務調査で不正が発見されても、「よし、次からちゃんとやるぞ!」とはならない場合が多いから。

調査の結果、Oさんは再び、適正に申告をしていたら支払わなくてよかった加算税や延滞税を納めたそうです。

会社員は確定申告が不要なのはなぜ?

納税は国民の義務。それは、会社員もフリーランスも同じです。働いて収入を得ている人たちは所得税と住民税を納めます。

しかし、フリーランスと異なり、会社員は毎年確定申告をするわけではありません。

なぜならば、勤務先の会社が毎月の給料から所得税や住民税を天引きし、1年間の収入や社会保険料などがわかる年末に、年末調整を行って差額を還付することで、確定申告が不要となっているからです。

ただし、出産やレーシック手術で医療費控除を受けるとか、家を買って住宅ローン控除を受けるとかいった場合には、会社員でも確定申告が必要になります。

一方で、フリーランスは毎年確定申告をします。以前と比べると、申告はとてもラクになりました。国税庁ホームページにある「確定申告書等作成コーナー」で自宅から申告ができるし、マネーフォワードやfreeeの登場で売り上げや経費などの記録も簡便になりました。

申告そのものの複雑さは、正しい納税を阻みます。これらのシステムがさらに進歩して、確定申告が平易になることを願っています。

フリーランスも、多くの場合報酬から所得税が源泉徴収されています。たとえば、ぼくが20万円で講演をしたとすると、20万円の10.21%が源泉徴収されるので、2万420円が報酬から引かれます(10%ではないのは、東日本大震災のあと、復興特別所得税が加わったから)。

報酬の20万円には10%の消費税がかかるので、源泉徴収された金額に2万円を足して19万9580円が振り込まれます。取引先にメールで送る請求書は、これらのことがわかるように記載しています。

しかし、源泉徴収されない取引もあります。ぼくの場合だと取材です。どのような取引からどれくらい源泉徴収するかは、そのお仕事の内容によって異なります。

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