経済小説家が「経済小説の巨人」清水一行を描く 『兜町の男』『通貨失政』など書評4冊

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ブックレビュー『今週の4冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『兜町(しま)の男 清水一行と日本経済の80年』

・『ドキュメント 通貨失政 戦後最悪のインフレはなぜ起きたか』

・『ボーダー 移民と難民』

・『ヒッタイトに魅せられて 考古学者に漫画家が質問!!』

『兜町(しま)の男 清水一行と日本経済の80年』黒木 亮 著
『兜町(しま)の男 清水一行と日本経済の80年』黒木 亮 著(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・経営共創基盤共同経営者 塩野 誠

本誌読者にも国際金融小説の旗手・黒木亮のファンは多いだろう。その黒木が、戦後から平成にかけて数千万部を売った経済・企業小説の巨匠である清水一行の生涯を描いた。経済小説家が経済小説家を描くというのだ。どんな動機で著者は先駆者に向き合ったのだろうか。

作家が描く「経済小説の巨人」 兜町の歴史、終戦からバブルまで

著者は清水が生きた戦中・戦後のほの暗さや猥雑(わいざつ)さ、筆で身を立てることを決めた男が成り上がるさまや編集者とのやり取りをまるで見てきたかのごとく描く。そして清水も株や相場の世界、世の事件を何人ものスタッフを使って取材し、その場にいたかのような真に迫る筆致で人気を博してきた作家である。

副題に「日本経済の80年」とあるように、兜町の株や相場の世界の変遷を清水の眼を通して読者は追体験する。終戦後の闇市の時代から、銀行にのべ2兆7000億円を融資させた料亭の女将(おかみ)がいるバブル期までの歴史である。

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