コロナ禍による格差拡大、是正には何をすべきか 『未来救済宣言』『縛られる日本人』など書評3冊

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ブックレビュー『今週の3冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『未来救済宣言 グローバル危機を越えて』

・『縛られる日本人 人口減少をもたらす「規範」を打ち破れるか』

・『異端のイノベーション』

『未来救済宣言 グローバル危機を越えて』イアン・ゴールディン 著
『未来救済宣言 グローバル危機を越えて』イアン・ゴールディン 著/矢野修一 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・北海道大学教授 橋本 努

新型コロナの感染拡大が続く一方で、しだいに日常生活が戻ってきた。このパンデミックから学ぶべき教訓は、いったい何であったのか。著者は事態と時評をつぶさに追いながら、実効的な救済策を一通り示している。

コロナ禍による格差拡大 是正のために何をすべきか

歴史を振り返ると、パンデミックは戦争や革命や国家の失敗と並んで、不平等を是正する機会となってきた。ではコロナ禍が平等化をもたらしたのかといえば、そうではない。例えば英国では介護職就業者の21%が黒人、アジア人、少数民族に分類される人々だが、彼らは亡くなった介護職員の63%を占めていた。2020年12月、米国で純増した15万6000人の失業者はすべて女性だったという。

資産の不平等も拡大している。パンデミックは超富裕層の資産を1年間で3分の1ほど増大させた。その額はアフリカ、ラテンアメリカ、南アジア各国を合計した経済規模を超えている。格差をいかに是正するのか。英国では20年、富裕税委員会がミリオネアのカップルに年率1%の財産税を5年間課す提案をした。実施すれば2600億ポンドを調達でき、新型コロナ危機の衝撃を相殺しうるという。

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