今は「働く人々でさえ飢えている」英国のリアル 「生活費危機」の恐るべき貧困化インパクト

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フードバンクで食品などの供給を受ける人々(写真:Mary Turner/The New York Times)

ロンドンで保育士をしているエイスリン・コーリーは、2人の息子から買う余裕のないおやつをねだられると、床にブランケットを敷いて「ピクニック・ゲーム」をする。勤め先の保育園のフードバンクで手に入れたオレンジやリンゴを3分の1にスライスして分け合うのだ。

「ある種のアクティビティにしているんです。なので、子どもたちはママが苦しんでいることは知りません」とコーリーは言う。

夕食が「パスタだけのパスタ」になることも多く、子どもたちの食べ物を確保するために自分の食事を完全に抜くときもある。

「生活苦」の兆候が至るところに

食料品の価格や暖房費がここ何カ月と記録的な高騰を見せる中、イギリスでは生活苦の兆候が至る所で見られるようになっている。BBCはオンラインで、1ポンド(約160円)以下でできるレシピを何十種類と公開。暖房の温度を下げた学校も少なくなく、多くの地域が「ウォーム・スペース」を開設するようになっている。寒い家に住む人々のために暖を提供する公共のスペースだ。

だが、世界で最も豊かな国のひとつであるイギリスの「生活費危機」の中でもとりわけ衝撃的な事実は、働いているのに子どもを食べさせるのに苦労する人々が増えていることだ。

中には、フードバンクに初めて足を踏み入れる人たちもいる。

イングランド中部のダービーでフードバンクを運営する教会牧師のヴィッキー・ロングボーンは「働いている人たちがフードバンクにやって来るというのは、恐るべき状況だ」と話す。

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