静岡リニア「財務諸表読めない知事」JR東海を糾弾 首相への意見書に記した長期債務残高に誤り

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百歩譲って、川勝知事が現在ではなく、令和11年度の長期債務残高6兆円を問題にしているとしよう。JR東海が、2010年5月10日の新幹線小委員会で長期債務残高の水準について、『「5兆円以内」とすることが適切かつ必要と考えている』と説明したのは事実だが、いまから約13年前の話であり、現在のJR東海の経営状況を踏まえないで当時の資料を問題にするのは、軽率というよりも悪意があるとしか言いようがない。

日本国有鉄道の膨大な債務を引き受け発足したJR東海は1987年当時、5.3兆円程度の借金を抱えていた。年6.5%程度の高い固定金利の債務だけでなく、営業キャッシュフローが3000億円程度しかなく、当時の返済は簡単ではなかった。

2000年代に入ると、営業キャッシュフローが4000億~5000億円程度となり、コロナ禍前には6000億円を超えていた。こうした中で、長期債務残高は2015年度に1.9兆円までに圧縮され、経営状況は改善され、非常に良好だった。

品川・大阪間の開業を8年前倒しするために、当時の安倍晋三首相の指示で、財投資金3兆円が2016〜2017年の2カ年で投入されたため、長期債務は5兆円近くまで一気に膨らんだ。

ただ、この3兆円は、JR東海が品川・名古屋間の開業後に、名古屋・大阪間のリニア工事に早期着手させる趣旨で、30年間元本返済猶予でリニア開業後に元本返済という非常に有利な債務であり、利子負担も非常に軽く、経営を圧迫するものではない。

2010年の小委員会では、銀行などからの負債調達を踏まえ、『長期債務残高を「5兆円以内」とすることが適切』としたのであり、当然、3兆円もの財投融資など想定しなかった。

JR東海は2021年4月、難工事の対応など品川・名古屋間の総工事費の見通しを1.5兆円増の約7兆円とし、2028年度の長期債務残高を「6兆円」と見込んだ。そこには3兆円の財投が含まれ、営業収益1.53兆円を見込んでおり、健全経営と株主安定配当を堅持できるとしている。

営業キャッシュフローが4000億〜5000億円程度しかなく長期債務残高は5兆円以内としていた2010年頃と現在とではJR東海の置かれた状況はまったく違う。

2020年11月18日の会見で、川勝知事は「(安倍元首相はリニアに)一番コミットされた首相であり、何しろ3兆円もの国税を財投として投入された」などと述べている。財投に国税の投入はなく、財投債(国債)を発行して大規模・長期プロジェクトに活用される。当然、JR東海は全額返済する。

川勝知事の誤りを誰も指摘できない

川勝知事に財投の知識はなく、職員も財投だけでなく、長期債務残高「6兆円」の事実誤認などを指摘しなかったのだ。何度も書いているが、“裸の王様”川勝知事にもの申せない県庁組織は崩壊寸前である。

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川勝知事は、岸田総理宛の意見書の最後で『JR東海の長期債務残高の再評価など、集中的に取り組んでいただくことを要請する』など無知蒙昧であるゆえに、強気の姿勢だった。

今回の重大な誤認は、単なる口頭ではなく、岸田総理宛意見書とともに県ホームページに公開したから、すべて“事実”として証明できる。これだけでなく、「反リニア」の言動すべてがJR東海の経営を危機に陥れる恐れが高く、非親告罪の業務妨害罪(偽計業務妨害:嘘の情報を流して業務を妨害する罪)に問われてもおかしくない。

小林 一哉 ジャーナリスト

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こばやし・かずや / Kazuya Kobayashi

1954年静岡県生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。2008年退社し独立。著書に『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』(飛鳥新社)等。

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