静岡リニア「財務諸表読めない知事」JR東海を糾弾 首相への意見書に記した長期債務残高に誤り

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その中に、『JR東海の長期債務残高「6兆円」問題』というタイトルの1事案を登場させた。

そこにはこう書かれている。

JR東海は、(2010年の)中央新幹線小委員会で「長期債務残高を『5兆円以内』とすることが適切かつ必要」とし、「長期債務残高『6兆円』を想定すると、ピークの年には新規・借り換えを合わせて1年間で1兆円を超える調達が必要になる。こうした多額の調達は現実に極めて難しい」と表明しました。
しかし、現在のJR東海の長期債務残高は健全経営の限度「5兆円以内」を優に超えています。JR東海は、2021年4月27日、「中央新幹線品川・名古屋間の総工事費に関するお知らせ」で、品川・名古屋間の工事費を1.5兆円増の約7兆円、「令和11年度の長期債務残高6兆円」と発表しました。
国に提出した事業計画とは明らかに異なる事態です。政府による検証が必要であると思料いたします。

【2022年2月1日10時00分 追記】「令和1年度の長期債務残高6兆円を「令和11年度の長期債務残高6兆円」に修正しました。

現在のJR東海の経営があまりにも危機的であると川勝知事が糾弾したのだ。

それどころか、川勝知事は2022年12月27日の会見で「6兆円になる債務、長期債務残高ではやっていけない。ところが、6兆円になっています」と述べたのに続いて、2023年1月11日には「長期債務残高が5兆円以下なら体力が持つ。しかし6兆円になったらもたないと(JR東海は)国交省に正式な文書で言っている。現在6兆円です」、「借金が6兆円ありますからね。長期債務残高が。そういう中でどうやっていくのか」など「JR東海の現在の長期債務残高6兆円」を連発していた。

県の担当部署に確認してみたら…

筆者は1月26日、担当の静岡県交通基盤部で、川勝知事の総理大臣宛意見書に『現在のJR東海の長期債務残高は健全経営の限度「5兆円以内」を優に超えている』と書いてあるので、その正確な数字を教えてほしいと何度も尋ねたが、誰ひとり答えられなかった。

筆者の取材でようやく、県も事実誤認に気づいたのであり、川勝知事の連発した「6兆円」を鵜呑みにしたのか、担当者らは公開されているJR東海の財務諸表をちゃんと確認しなかったのだ。あまりにもずさんである。

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