部活動では常態化?「教員の自腹問題」、驚きの実態と解決に必要なこと 保護者の私費負担を考えるうえでも重要な問題
また、部活動の行き過ぎた教員の自腹問題についても、「国が公の責任として見直すべきではないか」と福嶋氏は指摘する。部活動は、23年度より3年間で地域移行していくことになったが、働き方改革の文脈にとどまった政策になっているという。
「もともと、経済的に厳しい家庭の子どものために、教員が遠征費などを数十万円、人によっては数百万円も負担してきた実態があったわけです。そこをどうするのかという視点が、今の部活動の地域移行の政策からは見えません。お金をかけなければ維持できないような部活動のあり方を、見直す必要があるのではないでしょうか」
公費をどう学校に配布するかを決める自治体が、仕組みを見直すことで解決できることも少なくないはずだ。
「学校教育法には学校の設置者がその運営を行うと書いてあるのですから、自治体が抑制策を取れば教員の自腹はそれほど増えるはずがありません。例えば、修学旅行の旅費規程など見直せる部分はあるはずで、給食費も教員は給食指導をしているのですから無償にしてほしいところです。教育費は教員の自己負担をなくしたうえでなるべく自治体が持ち、どうしても足りない部分を保護者負担とする形を目指すべきだと思います」
さらに、行政の動き以上に、学校の自発的な動きが問われているという。配付された公費をどう予算建てし、どう執行するのかは学校に権限があるからだ。
「教員の指導計画などを基に、学校が財務の算段をつければ、ある程度教員の自腹問題は解決されるはず。ワークやドリルの見直し、教員が経費を申請しやすくなる仕組みづくりなど、財務を担当する学校事務職員や管理職の計画と工夫がカギになります」と福嶋氏は言う。
例えば、教材作りのために100円均一ショップなどで自腹購入する教員は多いが、実は色画用紙など似たような物を買っている。そこで、ニーズの高い材料を集めたコーナーを事務室の脇に作り、教員が自由に使っていいという仕組みにした学校事務職員もいるという。
また、「そもそもの目的や計画を見直すことで、教員や保護者の個人負担を減らすことができる」と福嶋氏は考える。例えば、修学旅行や制服は絶対に必要なのか、教職員でおそろいのTシャツの購入を異動してきた人全員に求める必要があるのかなど、当たり前だと思われてきたものの見直しについて教員たちで議論する余地はあるはずだという。実際、コロナ禍で縮小しても大きな問題がなかった行事や教育活動があるように、廃止や縮小をしても影響のない活動や慣例はいろいろとありそうだ。
「とくに重要なのは学校長の判断。そして必要な教育活動と物品購入だけを残したうえで足りない点は、学校が自治体に条件整備を要求していくことが大切になります。今後はそのように必要なものだけを残すようなコンパクトな学校運営にしなければ、公教育そのものも持続できないのではないでしょうか。ICTを活用し、授業や教材を複数の学校で共有するなど、学習効果を維持しつつ費用を減らす工夫も必要かもしれません。教育や部活動などさまざまな面から学校の形が変わっていく今こそ、教員と保護者が公教育のあり方を再考し、一緒に個人負担という重い荷物を下ろしていく必要があると思います」
(文:國貞文隆、注記のない写真:takeuchi masato/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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