海運コストの急低下はインフレ鈍化の前兆か コンテナ運賃インフレの兆し示す炭鉱のカナリア

拡大
縮小

新型コロナウイルス禍さなかの海運コスト高騰は世界的なインフレ高進を予告する「決定的な証拠」となったが、このコストが昨年のピーク後に急低下し、今後の物価圧力緩和に寄与しそうだ。国際通貨基金(IMF)の元当局者がこう予想した。

IMFアジア太平洋局で局長代理を務めていた米ジョージタウン大学のジョナサン・オストリー教授は24日、IMFのウェブサイトへの投稿で、世界のコンテナ運賃はコロナ禍以前の水準から6倍余り上昇し、2022年に見られた「持続的なインフレ上昇に関する炭鉱のカナリア」となったと指摘した。

  

輸送費と物価との関係性を巡るオストリー氏ら専門家5人の調査では、海上輸送費が2倍になるとインフレ率は約0.7ポイント上昇することが示唆された。

オストリー氏は調査に関する投稿で、「食料品やエネルギー価格の高騰が大きく取り上げられる一方で、輸送コストの上昇はインフレを引き起こす可能性があるにもかかわらず、ほとんど見過ごされているようだ。21年の世界輸送コストの実際の伸びを考慮すると、22年のインフレ率への影響は2ポイント強と推測される。これはほとんどの中央銀行にとって無視できないほど大きな影響だ」と分析した。

さらに、サプライチェーンの混乱やロシアのウクライナ侵攻に伴う商品価格上昇、コロナ流行下の貯蓄の取り崩しによる需要増加といった、予見できなかったか予測困難なインフレ押し上げ要因もあったとしながらも、「政策担当者が1年前に予測不可能だったことを政策決定に反映させなかった点は許されるかもしれないが、特に持続的な物価上昇圧力を示唆するものなど既知の要因を見逃したことについては責任を負うべきだ」と主張した。

その上で、「米連邦準備制度はスタートの遅れを取り戻すために一段の利上げを実施せざるを得なくなる公算が大きい。その結果、リセッション(景気後退)リスクがそれなりに大きくなり、米金融政策による世界的な悪影響も広がる」との見方を示した。

ドリューリー・シッピング・コンサルタンツがまとめた指数によると、アジアから米国までの海上貨物輸送運賃は昨年3月に8585ドル(現在の為替レートで約112万円)でピークを付け、その後は18年以来の低水準となる1200ドルに落ち込んでいる。

原題:Shipping-Cost Drop From Pandemic High Points to Easing Inflation(抜粋)

More stories like this are available on bloomberg.com

著者:Ana Monteiro

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT