今夏開業、宇都宮ライトレールが描く未来の交通 ファン押し寄せるが観光列車ではなく地元の足

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「住民と一体になって宇都宮ライトレールを良いものにしていく」。それは車両や施設のデザインからも見てとれる。たとえば宇都宮市の街づくりの一環で、1つのコンセプトに基づき、軌道施設をデザインするトータルデザインの取り組みを採用していることだ。

特にLRVにおいては、デザインや愛称について住民参加型のアンケートを実施したうえで決定した。さらに停留場の名称についても同様に、アンケートを実施した。ほかにも停留場の壁面に地域の特性を表現し、デザインシートを掲出する取り組みを、地域との協働・ワークショップによって決定した。

停留場ベンチに記念プレートを設置するドネーション事業や、副停留場名称のネーミングライツ事業も実施している。こういったソフト面からも、地元住民らと一緒に取り組むことで、「みんなの地元の鉄道」、愛される公共交通を目指しているのであろう。

観光列車ではない

鉄道は地元利用者の支えなしでは成長できない。通勤や通学に毎日使えて、なおかつ地元利用者にとって愛される交通機関でなければ、長続きはしない。宇都宮ライトレールでは、既存のバス路線との結節や、地域連携ICカード(totra)導入による上限運賃制度や乗り継ぎ割引なども活用していく予定だという。

現在は開業に向けて、運転士の教育や試運転を行っている段階で、今後は実際の運行を想定した習熟運転や定期券の営業活動、開業イベントの実施などに取り組むという。これは地方ローカル線などが増収を目的に計画する「観光列車」として運用するのではなく、地元の利用者を優先したためだ。

観光列車による収益ではなく、鉄道が存在することで、地域全体の価値が向上し、良い方向に向かっていこうとする。これが本来の「公共交通」の姿であろう。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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