学校の「著作権」トラブル、例外規定の範囲は?掲示物や動画、音楽の利用に注意 イラスト無断利用で「10万円超の賠償金」事例も
原口氏には2点、心がけていることがある。1つは「『ダメ』ばかりを教えないこと」、もう1つは「身近な例で説明すること」だ。
「『これは犯罪です』と言葉で脅すことは簡単です。しかし、著作物を楽しむこと自体が恐れられるのは著作者も不本意です。『こうすれば使えるよ』『著作者の気持ちや生活を想像してみよう』と肯定的に伝えることが大切でしょう。
実際に説明する際は、児童・生徒の語彙の範囲で具体的な事例を挙げるのがポイントです。例えば、『好きなアイドルのCD を1枚1000円で買ったら、アイドルはいくらもらえるんだろう?』などと問いかけ、『実は歌手がもらえるのは10円。残りは作詞者・作曲者や演奏者、CDを作る会社などに支払われるよ』と話せば、著作者への理解も深まります」
そうして著作者を想像できたところで、「著作物を無断・無料で使うと、彼らは収入が減って生活に困り、新しい作品を作ることもできなくなる」と訴えれば、倫理的にも著作権の意義に納得がいく。著作物の違法な利用が技術的に可能な状況でも、自分で歯止めをかけられるはずだ。
学校は著作権の例外、先生のまねでコピーはいけない
端末の向こうには無限の著作物が存在している。児童・生徒が端末を手にしたタイミングこそ、著作権を指導する好機だと原口氏は語る。とはいえ、著作権は時代に応じて頻繁に法改正をしており、つねに最新の情報をチェックする必要がある。そこで、知識のアップデートに有効な情報源を紹介してもらった。
●文化庁ホームページ 著作権
●文化庁 教職員・情報通信技術支援員(ICT支援員)著作権講習会
※毎年8月に開催、リンクは令和4年度のもの
●公益社団法人 著作権情報センター
●一般社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)
●JASRAC PARK(子ども用ウェブサイト)
●原口 直の学校著作権ナビ
●原口 直の一歩先ゆく音楽教育
「注意点は、参考にした書籍やサイトの情報がいつのものなのかを必ず確認して、最新の情報を入手することです。学校内では情報科教員・ICT支援員や学校司書が著作権に詳しいでしょう。判断に迷ったらこうした方々に聞くのも手です」
児童・生徒が、発表スライドにキャラクターやイメージ写真を用いることもあるだろう。それによって発表がわかりやすくなれば、教員からも褒められるはずだ。しかし、同じことを社会で行った途端にそれは違法行為になってしまう。原口氏は最後にこう締めくくる。「学校は正しいことを教える場です。しかし著作権に関しては唯一、『ダメな見本』となってしまいます。学校は著作権の例外であること、学校外で先生のまねをしてはいけないことを、しっかり子どもたちに教えてあげてください」。
(文:安永美穂、注記のない写真:macha / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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