オンライン授業とは?
オンライン授業は、その名のとおりオンラインで授業を行うことです。
これまでみんなで集まって1つの教室で授業をすることが一般的でしたが、そうではなくパソコンなどのツールを使って授業を受ける形になります。オンライン授業は大きく2つの形式に分類されます。
オンデマンド型
あらかじめインターネット上にアップロードされたデジタル教材を用いて生徒が好きなタイミングで受講できる方式です。
ライブ双方向型
こちらはスピーカーである教師が授業を進めながら適宜生徒に質問したり、生徒同士でグループを作って意見を出し合ったりするなど従来の授業をそのままオンラインに移した方式です。
オンライン授業のメリット
・登下校や教室移動のための移動時間が必要なく、交通費もかかりません
・授業ごとに配置していた教員が不要になります
・生徒は好きな時間、場所で授業を受けることができ、わからないところがあれば後で動画を見返すこともできます
・臨時休業など有事の際でも継続して授業を受けることができます
オンデマンド型オンライン授業の効果的な活用方法としては、これまで勤務時間の大半を授業が占めていた教員が他の業務、例えば生徒のフォローアップや保護者との面談、はたまた自身の研究に割り当てることができるといったことが挙げられるでしょう。
・生徒は好きな場所で授業を受けることができる
・登下校や教室移動のための移動時間が必要なく、交通費もかかりません
・臨時休業など有事の際でも継続して授業を受けることができます
・オンデマンド型ではただ動画を視聴し続けることになってしまいますが、ライブ双方向型では発表や質問の時間を設けることで生徒は緊張感を持って授業に取り組むことができます
・学校に行かなくてもグループディスカッション等を通じて生徒同士でのコミュニケーションを深めることができます
ライブ双方向型授業は、授業の場所が教室からオンラインに移ったものであるため、コロナ禍などでも集まらずにコミュニケーションが取れたり、事情があって学校に行けない生徒が授業に参加できたりするケースがある、といった場合に有効な手段といえるでしょう。
オンライン授業の普及率
全国600名の小・中・高の教員に対する2021年12月でのオンライン授業の経験について当媒体(東洋経済education×ICT「https://toyokeizai.net/articles/-/507284」)が実施したアンケートによると、
(内訳)
オンライン授業は全く検討も、したこともない :24.8%
オンライン授業はしたことがないが、検討している :31.7%
オンライン授業をしたことがあるが、現在はしていない :33.8%
となっており、オンライン授業は普及していると言える状況ではないことがわかります。
オンライン授業とGIGAスクール構想*1
時代に合わせて、ITを駆使しながら授業を行うことはとても重要なことです。
とはいえ、実際はまだまだ課題があるのが現状です。最近は「GIGAスクール構想」により、授業もパソコンやタブレットなどを使って行われることが学校によって増えてきました。
*1: GIGAスクール構想とは?
小・中学校の児童生徒1人に1台端末および、全国の学校に高速大容量の通信ネットワークを整備することで多様な子どもたちに個別最適化された創造性を育む教育を実現する構想で、2019年に文部科学省から発表されたプロジェクトのことです
(GIGA:Global and Innovation Gateway for Allの略)
オンライン授業とコロナ禍
GIGAスクール構想については当初、2023年度までの実現としていましたが、新型コロナウイルスの影響によって前倒しされ、21年3月までにほとんどの公立の小・中学校で「1人1台端末」とネットワーク環境が整備されました。
コロナ禍の全国一斉休校や分散登校などの際には、家庭にある端末などと併せてオンライン授業を行う学校も多くありました。
オンライン授業に必要なツール
では、実際にオンライン授業(ライブ双方型)を行うためにはどんなツールが必要になってくるのでしょうか。ツールごとにさまざまな機能を備えており、オンライン授業をスムーズに進めるポイントにもなります。
どのツールでも共通して使用できる基本的な機能として、
・ペンタブ等で描けるホワイトボード
・授業の録画ができる
・チャット、リアクションができる
などが挙げられます。
それでは上記にはないツールごとの機能を見ていきましょう。
オンライン授業に役立つツール①「Zoom」
1つ目はZoomです。「Zoom飲み」という言葉がはやったくらい一般的に浸透しているツールで、さまざまな会議などにも使われており、もちろんオンライン授業にも使うことができます。サインなどのジェスチャーも認識します。
また、Zoomには後述する他の2つのツールにはない特徴的な機能として、「ブレークアウトセッション」というものがあります。これはZoomの授業に参加している生徒をいくつかのグループに分けて少人数のディスカッションやグループワークを行うことが可能になるといったものです。このブレークアウトセッションを使うかどうかを、Zoomを使うのか他のツールを使うのかの基準として考えてもよいでしょう。
※グループアウトセッションは主催者(教師)が有料版を使用している必要があります。
また、無料版では1回の授業やミーティングが一律40分までと制限があるため(2022年5月から)、Zoomを使う場合、教師側は有料版の使用がほぼ必須と言えるでしょう。
オンライン授業に役立つツール②「Microsoft Teams」
2つ目はTeamsです。Teamsを使ううえでいちばんのメリットはWord、ExcelやPowerPointなどのOfficeアプリを共有し共同編集ができる点でしょう。生徒間でグループワークをしたり、生徒は宿題をやったらそのままアップロードして、教師はそのファイルを編集して添削したりといったことができます。
またTeamsではチームを複数作ることができ、学年ごと、クラスごと、などを設定してチャットを連絡網のように使用する、保護者会や役員会のようなことをWeb会議で行う、といった活用もできるでしょう。
また、有料版と無料版で録画機能の有無や保存できるファイルの容量などに差がありますが、教育機関向けの「Office 365 Education」を契約している学校であれば気にする必要はないでしょう。
オンライン授業に役立つツール③「Google Meet」
3つ目はGoogle Meetです。Googleが提供するクラス運営ツール「Google Classroom」と併用することで、Teams同様に教材や課題の配布や採点、連絡用として使用することができます。
ただ、こちらは連携できるオフィス系ソフトがGoogleのものになるため、MicrosoftのOffice系ソフトを使い慣れている場合は注意が必要かもしれませんが、逆にChromebookを使用している場合などはMeetのほうが使い勝手がよいかもしれません。
オンライン授業に必要な機材
オンライン授業を行う際はいくつかの機材が必要になります。受講側・教員側ともデスクトップPC、ノートPC、タブレット端末のいずれか、またマイクやイヤホン、カメラなどを使うことでオンライン上でのコミュニケーションをとることができるようになります。
Webカメラ
基本的にはPCやタブレット端末に付いている場合が多いですが、万が一ない場合は別途接続する必要が出てきます。授業によっては板書などもあり、映像に映すために必要です。
イヤホン・マイク
ノートPCやタブレット端末には内蔵スピーカーやマイクがついている場合がほとんどです。ただ、スピーカーは授業の音声が家庭内に丸聞こえになってしまったり、内蔵マイクは逆に家族の声を拾ってしまったりといった場合があるため、可能であればイヤホンとマイクがセットになったヘッドセットの導入がお勧めです。
ネットワーク
自宅で授業を行う際はルーターを用意して自宅のインターネットにつないでおくようにしましょう。
画面共有やカメラで映像を使った授業をする場合、最低3Mbps、可能であれば10Mbps程度の回線を用意したほうがよいでしょう。スマートフォンのテザリングなどでは速度が遅くなってしまうため、自宅でインターネット回線がない環境の場合、新たに回線の契約をする必要があります。一時期爆発的に増加したADSLが2024年3月には終了することが決定していることもあり、今後自宅に安定したインターネット回線を導入する場合は光回線やケーブルテレビが候補となるかと思いますが、費用的に導入が厳しい家庭があることも考慮する必要があるかもしれません。
デバイス
基本的には学校から配布されたもので問題ないでしょう。自分で用意する場合は古いものだと反応が悪くなりスムーズに使えない場合があります。
授業以外でプログラミングや3Dモデリングなど独自の学習を考えている場合は相応のスペックのものを用意するようにしましょう。
学校で端末を配布する場合、今後端末の利用方法が広がっていくことを考えれば、オンライン授業が行えるギリギリのスペックの端末ではなく余裕を持ったものを導入するべきであると考えます。
オンライン授業のデメリット・問題点
オンライン授業のデメリットとしては、受講側が環境によって集中できないことが挙げられます。
それぞれ下記について見ていきましょう。
オンライン授業のデメリット・問題点①オンライン授業でありがちな問題点
また、モニターがあるか、通信状況に問題がないかなど、それぞれの児童・生徒のオンライン授業を受ける環境について把握していなければいけないことがあります。場合によっては、子どもが使うデバイスのスペックが足りなくて一時授業を中断しなければならないケースもあります。
オンライン授業のデメリット・問題点②教員側(教えるほう)にありがちなこと
これまで行ってきた授業の方法とは大きく異なる部分でもあるので、伝わっているのかを心配するあまり教師が一方的に話し続けてしまうことがあります。
ずっと話を聞き続けるのは児童・生徒にとっても大きな負担となってしまい、モチベーションを下げてしまうことにもつながりかねません。そのため、グループワークなども取り入れながら飽きないような工夫をする必要があります。
オンライン授業のデメリット・問題点③対面授業と比較して
対面授業との大きな違いは、子どもの緊張感だといえます。やはり学校に通うだけで自然と学習モードに入っている児童・生徒は多く、通学によってオンオフの切り替えができていたのでしょう。
しかし、自宅でオンライン学習するとなると、どうしても環境によってはだらけがちになってしまうこともあるので、注意を払う必要があります。
また成長過程の子どもたちにおいては対面でのコミュニケーションを取ることは大変重要ですが、オンライン授業が多く続く場合にはその部分をどうやって補っていくかについても考える必要があるでしょう。
オンライン授業のデメリット・問題点④著作権
オンライン・対面授業で同じことが言えますが、著作権には注意が必要です。例えば販売しているドリルなどをコピーして配ってはいけません。
教材などはしっかりとご家庭で購入してもらうように注意をしましょう。
オンライン授業のデメリット・問題点⑤生徒側(受講するほう)でありがちなこと
受講する側で考えられるのが、集中力が続かないということです。
場合によっては自宅のペットや小さい弟や妹などがうるさくて、勉強に集中できないこともあるでしょう。
そういった子どもに対しては、例えば通学して学校などでオンライン授業を受けてもらったり、録画された授業の視聴でもOKにしたりするなど、配慮は必要になります。
オンライン授業 小学校事例
例えば、小学6年生向けでは「鳥獣戯画」という作品を題材にした授業があります。
それぞれのお子さんが作品を見て、気づいた点などをタブレット上に書いて、その後に共有する形で行います。ただでさえ飽きやすい小学生の子どもたちに対しては授業を聞くだけにならないよう、考えた内容を発表したり議論したりすることによって学ぶ意欲を引き出すよう工夫することが大切かもしれません。
上記はあくまで事例ですが、具体的な小学校のオンライン授業の事例について下記記事などご参考ください。
オンライン授業 中学校事例
中学校では、オンラインを活用したハイブリッド型の授業も実践されています。
技術の教科におけるプログラミング教育において、タブレット端末を用いて実際にプログラミングを行いながら、問題点や改善できることなどをメモして発表するといったことも行われています。
具体的な中学校のオンライン授業の事例について下記記事などご参考ください。
オンライン授業 高校事例
ライブ双方向型とオンデマンド型を組み合わせた事例もあります。
古文の授業であらかじめ授業の配信予定日を決めておいて、限定公開されたYouTubeを視聴することで授業を受け、生徒からの質問は後ほどTeamsを用いて答えるといった方法であれば生徒は質の高い授業を受けつつ、教師はその間別の作業をすることができます。
具体的な高校のオンライン授業の事例について下記記事などご参考ください。
オンライン授業 不登校支援に関する事例
不登校支援でもオンライン授業は活用されています。
具体的な不登校支援におけるオンライン授業の事例について下記記事などご参考ください。
オンライン授業 大学事例
東京大学では感染対策を講じたうえで可能な限り対面授業を取り入れていくとした一方で、従来の対面方式では得られない効果が認められたとしてオンライン授業も積極的に取り入れていくということです。オンライン授業の形態としてはライブ双方向型を中心としつつ、オンデマンド型や、オンラインと教室どちらでも授業が受けられるハイブリッド授業も取り入れられているようです。
オンライン授業に特化したポータルサイトが設けられており、PCのスペックについても記載があるため参考にしない手はないでしょう。
具体的な大学のオンライン授業の事例について下記記事などご参考ください。
オンライン授業に関するアンケート
オンライン授業に関するアンケートを過去3回行っています。ご参考ください。