記事の目次
Edtech(エドテック)とは?
Edtech(エドテック)とeラーニングの違い
EdTech(エドテック)導入補助金について
EdTech(エドテック)導入補助金の申請方法・締め切り
補助金交付申請について
EdTech(エドテック)導入補助金を検討する 学校関係者の方の導入メリット
EdTech(エドテック)導入補助金を検討する 事業者の方の導入メリット
まとめ

Edtech(エドテック)とは?

EdTechとは、教育を意味する「Education」と、IT技術を指す「Technology」を掛け合わせた造語です。私たちの周りではすでに「IT技術を取り入れた教育活動」が多く見られます。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で社会活動のオンライン化が加速する中、最新のテクノロジーを教育産業と掛け合わせて、イノベーションを起こすEdTechの需要が増加しており、市場として今後も成長が見込まれています。

また、EdTechというとオンライン学習を連想しがちですが、実際には教育目標を達成するために作られたデジタル製品、ハードウェア、ツール、サービスの全体を指す巨大な産業です。

Edtech(エドテック)の市場規模

日本では現行の学習指導要領においてプログラミング教育が盛り込まれました。小学校では2020年度から、中学校では2021年度から、そして高等学校では2022年度からプログラミング教育が必修、拡充されています。

参照:https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/21/1416331_001.pdf

学習指導要領は小・中・高で内容が分かれています。そして、文部科学省管轄の学校はこの指導要領に沿って授業を行います。そのため、公立・私立にかかわらず、どの学校でもプログラミング教育が必修、拡充されました。プログラミング教育を各教科内で実施していくことで、教育現場におけるICT環境のさらなる整備や専門的な人材の充実が必要とされています。

日本のEdTech市場規模は、2023年には約3000億円、2025年には3200億円超に達すると予測されています。

引用:野村総合研究所「ITナビゲーター2020年版」

日本でのEdTech市場は黎明期ですが、パソコンやタブレット、スマートフォンなどを利用した学習コンテンツの市場は拡大していくでしょう。

世界のEdTech市場規模は2020年に894億9000万ドルとなり、2021年から2028年までの年平均成長率は19.9%と予測されています(※1)。教育産業のマーケットリサーチを専門とするHolonIQは2030年には市場が10兆ドルに達すると予測しています。(※2)

(※1) Education Technology Market Size, Share & Trends Analysis Report By Sector (Preschool, K-12, Higher Education), By End User (Business, Consumer), By Type (Hardware, Software), By Region, And Segment Forecasts, 2021 - 2028
(※2) Education in 2030 - The $10 Trillion dollar question - HolonIQ

Edtech(エドテック)導入のメリット

学校がEdTechを導入するメリットは主に以下のようなことが挙げられます。

・「いつでも、どこででも」好きなだけ授業を受ける
・人材不足の解消
・教室運営にかかる賃料などのコスト削減

そして、事業者が導入するメリットは以下になります。

・社会人学習・リカレント教育の活発化
・教育の効率化やコスト削減、人的リソースの有効活用
・「学び直し」の機会の創出

教育を取り巻く、あらゆる場面でのポジティブな効果が期待されます。

Edtech(エドテック)とeラーニングの違い

EdTechが、教育を意味する「Education」と、IT技術を指す「Technology」を掛け合わせた造語なのに対して、eラーニングとは、インターネット技術を用いて学習することであり、また学習を行うための教材や学習管理システムの総称として用いられる言葉です。

eラーニングの「e」は、e-mailなどと同様に「Electronic」を意味したもので、EdTechとは語源が異なります。

EdTech(エドテック)導入補助金について

国が後押ししているため、EdTechを導入する際に利用できる補助金があります。それぞれの対象となる学校や事業者、対象となるツールを見ていきます。

対象となる学校・事業者

EdTech導入補助金は、EdTechソフトウェアやITを活用した教育サービスを学校に提供する「EdTech事業者」に対して、その導入にかかる経費を補助する制度です。

EdTech事業者が補助申請者となり、自治体・学校法人といった学校等設置者と連携して EdTechツールの教育現場への導入を促進することを目的としています。

「EdTech導入補助金2022」の補助対象となる学校・教育機関の要件は、以下のとおりです。

・学校教育法第一条に定める学校(幼稚園や大学を除く)
・高等専修学校
・教育支援センター(適応指導教室)
・一定の基準を満たすフリースクール(※)
・文部科学大臣の認定を受けた在外教育施設(海外の日本人学校等)

(※)フリースクールの定義について
・不登校児童・生徒に対する学習支援・指導・相談を主たる目的とし交付申請時点までに2年以上の活動実績があること
・児童・生徒の在籍校との間に十分な連絡体制が構築されていること
・複数世帯の児童・生徒(小、中学生)を受け入れていること

EdTech 導入補助金 2022 - よくある質問:制度概要について

また、補助対象となる事業とは、

・事務局が求める導入効果の測定等に応じられる規模(少なくとも1学校あたり必ず1クラス相当分以上の児童・生徒に対してEdTechツールを導入する等)のEdTechツールの導入実証を行う事業であること。ただし、導入するEdTechツールの数量は導入実証に参加する生徒児童・教職員数を超えない範囲(予備を含めない)とする。

・事業実施主体となるEdTech事業者と、導入実証事業の現場となる学校等教育機関及び学校等設置者が一体となり、導入実証事業終了後のEdTechツールの継続的な活用の可能性を視野に入れて策定した計画を実行し、交付決定以降の効果報告やアンケート等への協力を行うことを確約することができる事業であること。

・原則、学校等設置者及び学校長等の事業に対する合意と協力の意志があり、次年度以降の継続活用や費用負担方法を検討できる資料(導入見積り等)を基として計画された事業であること。

・EdTechツールの導入以降、ツールの補助対象期間以降も、学校等教育機関への継続的な運用提案や効果測定の結果を基にした新たなツール利活用の提案を行うなど、導入先における学習環境の抜本的改善を目指した手厚いサポートを行う事業であること。

・EdTechツールを導入する際、補助対象経費で定める費目について、EdTech事業者の自己負担が必ず発生する(補助率 1/2 の場合、自己負担は補助対象経費の 1/2 となる)とともに、その自己負担分について学校等設置者及び学校等教育機関の費用負担がない事業であること。

引用:一般社団法人 ICT CONNECT 21「【補助金交付申請】 EdTech導入計画 入力項目一覧

Edtech(エドテック)補助対象となるツール一覧

補助対象となるEdTechツールは、学習管理・授業支援や学習支援コンテンツ・サービス、発展的な学びなどに関するメインツールのほか、校務支援ツール、コミュニケーションツール、教員向け研修といったオプションツールまで多岐にわたります。

メインツール
<学習管理・授業支援>
教職員や児童・生徒間で学習データや回答・発表などを共有・管理することで、学びの効率化や協働作業等を促すもの

<学習支援コンテンツ・サービス>
個々の児童・生徒の資質・能力を高めるために、または教職員が指導内容の発展や学習支援の円滑化のために用いる学習支援コンテンツ(オンライン学習ツール、EdTech事業者が実施・提供する遠隔授業サービス、協働学習、ドリル教材、AI教材、プログラミング学習等)
※動画・アニメーション等のコンテンツにおいては学校教育法第34条第4項等に規定する教材(補助教材)に該当するもの

<発展的な学び>
特定の教科にとどまらない発展的な学びを促すもの

オプションツール
<校務支援ツール>
教職員の業務負担軽減や校務の統一化・標準化・業務改善など、学校内の諸業務を効率化するもの

<コミュニケーションツール>
学校と児童・生徒・保護者間で使用する掲示板やチャット・SNS等での連絡コミュニケーションツール

<教職員向け研修>
教職員向けの指導スキル研修、マネジメント研修等ITを活用して実施するサービス

※オプションツールについては、メインツールと併せて導入実証を行う場合のみ、補助の対象となります。

引用:令和3年度補正 EdTech導入補助金2022

EdTech(エドテック)導入補助金の申請方法・締め切り

EdTech導入補助金を申請する方法や、締め切りなどについて見ていきます。
※令和3年度補正の申請については、2022年7月29日に終了しました。

補助金交付申請について

補助金交付の申請をする際は、下記の流れに沿って手続きをしていきます。

①各学校などで導入したいEdTechツールを検討し、事業者に連絡・相談
※本補助金の対象となるEdTech事業者はWebで公表。

②事業者の申請書類作成に関する必要な情報(EdTechツールの導入計画など)を事業者に提供
※公立学校の場合、教育委員会は当該手続きに関わる必要な協力をお願いします。

③EdTech導入補助金が採択された後、事業者と連携して学校などにEdTechツールを導入・活用スタート
※事務局に実績報告(完了報告)を行った後、事務局の確定検査が完了次第、補助金交付の手続きが行われます。

参照:令和3年度補正 EdTech導入補助金2022

参考サイト

EdTech導入補助金

EdTech導入補助金とは?ICT教材を活用した新しい学びを進めよう

EdTech(エドテック)導入補助金を検討する
学校関係者の方の導入メリット

EdTechはeラーニングと比較して、料金設定が比較的安いという違いがあります。

eラーニングは、初期費用に加えて月会費がかかることが多いサービスです。一方、 EdTechは月会費無料というサービスも多く、無料とまでいかなくてもかなり安いサービスが多いのが特徴です。

料金が安くなったことで、利用者が増えているということは言えるでしょう。

【A.中小企業単独型】

〇中小企業等単独×学校等設置者および学校等教育機関

導入実証に参加する児童生徒・教職員数(※4)×4500円

もしくは、導入先となる学校数×200万円のいずれか低い額(1申請当たりの
補助下限額は60万円以上)

【B.中小企業コンソーシアム型】

〇【コンソーシアム構成企業が2社の場合】

中小企業等コンソーシアム×学校等設置者及び学校等教育機関

導入実証に参加する児童生徒・教職員数(※4)×4500円×1.5

もしくは、導入先となる学校数×200万円×1.5のいずれか低い額(1申請当たりの補助下限額は150万円以上)

〇【コンソーシアム構成企業が3社の場合】

中小企業等コンソーシアム×学校等設置者および学校等教育機関

導入実証に参加する児童生徒・教職員数(※4)×4500円×2

もしくは、導入先となる学校数×200万円×2のいずれか低い額(1申請当たりの補助下限額は150万円以上)

【C.大企業を含むコンソーシアム型】

〇【コンソーシアム構成企業が2社の場合】

大企業及び中小企業等コンソーシアム×学校等設置者および学校等教育機関

導入実証に参加する児童生徒・教職員数(※4)×4500円×1.5

もしくは、導入先となる学校数×200万円×1.5のいずれか低い額(1申請あたりの補助下限額は150万円以上)

【コンソーシアム構成企業が3社の場合】

大企業及び中小企業等コンソーシアム×学校等設置者および学校等教育機関

導入実証に参加する児童生徒・教職員数(※4)×4500円×2

もしくは、導入先となる学校数×200万円×2のいずれか低い額(1申請あたりの補助下限額は150万円以上)

EdTech(エドテック)導入補助金を検討する
事業者の方の導入メリット

eラーニングは2000年ごろに導入されました。当時はまだスマホが普及しておらず、パソコンの前で学習を行うことが一般的でした。また、現在のようにテクノロジーが進んでいたわけではないため、オンラインの学習を行うためのシステム開発に多額の資金が必要だったのです。

学校現場においては、構内にパソコン室が整備され始めたのも2000年代冒頭です。空調の整った部屋に、数十台の端末と周辺機器などが整備され、eラーニングを実施するハード面の整備はできていましたが、全校児童・生徒分の端末が整っていたかといえば、そうではない学校がほとんどだったと思われます。

しかし現在は、GIGAスクール構想が具現化し、1人1台端末が全国どこの小中学校にも完備されています。そのためインターネット環境と情報端末あれば、いつどこにいても学習が可能になりました。

このEdTech導入補助金を検討してソフト開発を進めていくには、非常に導入しやすい状況にあると思われます。以前であれば、学校内での受注件数もパソコン室の台数分しかなかったものが、現在は全児童・生徒数分で捉えることも可能です。事業者としては低単価でサービスが提供できることで、学校現場におけるさまざまなニーズ、カスタムオーダー型のサービスという、継続的な学校支援が可能になっていくのではないでしょうか。

EdTech(エドテック)に関するおすすめの本3つ

これならできる! 学校DXハンドブック 小・中・高・特別支援学校のデジタル化を推進する「授業以外のICT活用事例」 単行本(ソフトカバー)

授業「以外」の学校における職員室内のDX化について、無料サービス・有料サービスそれぞれのメリットを活用しながら、現場の声が反映した提案がされています。また、識者によるコメントもとてもわかりやすいです。

教育DXで「未来の教室」をつくろう―GIGAスクール構想で「学校」は生まれ変われるか

経済産業省が関わりさまざまな学校で始まった試行錯誤の実践事例が紹介されています。お勧めは、第3章「学びの自律化・個別最適化」。具体的な事例(ソフト名や授業の内容)について触れられており、読者の実践への意欲が高まります。

GIGAスクール構想で進化する学校、取り残される学校

読者ターゲットは管理職や教務主任、教育行政に関わる方。GIGAスクール構想における初期段階(端末配備や通信設備設定)が終わり、各学校が目指している教育についてICT器機を活用して実現していく時期の今。どのようなシステム構築、マインドセットの改革が必要か述べられています。

まとめ

EdTechにおいて、キーとなるのは事業者と学校・教育委員会が共同で計画を立て、運用していくことです。教育委員会からのトップダウン型のEdTech戦略も自治体によってはあると思われますが、現場の声=授業者の声が集約され、教育委員会や事業者とともに、使用するソフトウェアやサービスの選定までを行う、ボトムアップ型にも期待をしています。私がアドバイザーとして勤務する長野県の池田町においては、まさにボトムアップ型でCanva for Educationを導入し、日本初の事例ともなりました。現場の先生方からの声が届くのかどうかが、このEdTechにおいては重要だと感じています。

 
清水 智(Shimizu Satoshi)
FREERIDE TEACHER (一社)エンターキー教育ICTコンサルタント

元東京都公立小学校主幹教諭。都内&小笠原諸島父島での公立小学校勤務から長野県白馬村へ移住。長野県内で公立小学校講師と白馬エリアを中心とした教育ICTのアドバイザーも(小中学校・自治体教育委員会など)務める。GEG Hakuba Valley 共同リーダー