約20年の実践に自信、早稲田大学「オンライン併用の対面授業」推進の真意 ブレンド型の効果大、教員支援に全力を尽くす

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新型コロナウイルス感染症拡大は、大学教育に大きな変革をもたらした。オンライン授業には、いまだ多くの課題があるものの、コロナ収束後、元の授業スタイルに戻ることは不可能だろう。逆にコロナを経て変われない大学は、姿を消すといってもいいかもしれない。そんな中、オンライン授業の実践が20年近くあったうえでコロナ禍を迎えたのが早稲田大学だ。今回、そのノウハウを一気に全学に広め、今後は効果的な教授法の実践や新しいテクノロジーを活用した学修環境の整備を見据えるという。

新型コロナ以前から約1600科目でオンデマンド型授業を実施

「学生・教員の混乱は予想されたものの、本学にはオンライン授業の知見と経験が十分蓄積されており、それに対処する支援策を早くから打ち出せました」

森田裕介(もりた・ゆうすけ)
早稲田大学 大学総合研究センター副所長
人間科学学術院 教授

こう話すのは、早稲田大学の大学総合研究センター副所長で人間科学学術院教授の森田裕介氏だ。新型コロナウイルスの感染が広がり始めた2020年春、早稲田大学は授業開始を延期して、5月から全面オンライン授業(オンデマンド授業・同時双方向型授業)をスタートさせた。

だが実は、早稲田大学では19年度の段階、つまり新型コロナ以前にすでに約1600科目のオンデマンド型授業を実施しており、延べ8万7000人以上が学んでいた。その土台を築いたのは、教育工学の分野で進めてきたオンライン授業の研究成果と、すべてのカリキュラムをeラーニングで行う日本初の通信教育課程「人間科学部eスクール」を03年度に開設したことで積み上げた実績だ。そのためコロナ禍におけるオンライン授業への対応も、教育工学を専門とする森田氏らが中心となって全学の教員の授業支援を行ってきた。

「20年3月に、新年度からの授業は100%オンラインにすると決めましたが、その時点でオンライン授業のマニュアルが存在しており、早々に教員へ配布することができました」

マニュアルに掲載されている内容も、機器類の設定・接続といった技術的解説にとどまらず、実際に役立つヒントが豊富に掲載されている。

例えば「オンライン授業での集中力は6分がピークで、9分を超えると動画を見なくなるという研究結果があるので、動画コンテンツは5〜15分くらいに区切って配信したほうがいい」「最初に教員が顔を出して語りかけると学生たちも安心し、授業に積極的に参加するエンゲージメントが高まる」など、20年近くにわたって蓄積してきた、よりよい授業を行うためのノウハウにあふれている。

教職員に対してITツールの技術的支援とオンライン授業の運営支援を行うCTLT

20年4月には大学総合研究センターが、教職員に対してITツール利活用などの技術的支援とオンライン授業の運営支援をワンストップで提供するサービス拠点「CTLT(Center for Teaching, Learning and Technology)」を開設。動画撮影方法やスライドの作り方といった技術的なこと、授業デザインや成績評価の仕方など教育・教授法(Pedagogy)に関わることを支援するために、オンラインセミナーを4回実施したところ、延べ3317人が参加したという。

「セミナーのほかに個別相談を実施しており、20年4月の相談件数は約1300件、5月は約6300件もありました。教務部と連携しながら全学の大学教員の支援を行うCTLT拠点のスタッフに加えて、全学的な学生支援サービス拠点『早稲田ポータルオフィス』や、近接部門の職員の力も借りて相談を受け付け、全科目でオンライン授業のスタートが切れました。現在もCTLTセミナーをはじめ、大小さまざまなセミナーを月1〜2回開催、すべてコンテンツ化してラーニング・マネジメント・システム(LMS)にアーカイブしています」

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