学校の「著作権」トラブル、例外規定の範囲は?掲示物や動画、音楽の利用に注意 イラスト無断利用で「10万円超の賠償金」事例も

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「学校通信や学級通信、PTA会報などは保護者が読む配布物なので、現時点では学校の『例外』にあたらないとされるでしょう。学校通信などに無許諾・無償でイラストや写真を掲載した場合、インターネット上で不特定多数の人に発信したケースに限らず、学校内で配布するだけでも著作権侵害になる可能性があります。なお『著作権フリー』とある素材でも、著作者自身が記した利用規約をよく読み、条件に応じた使い方をすることが大切です」

また原口氏は、「著作権の例外規定は『授業のみ』である点も要注意です」と指摘する。同じ学校活動でも、学校説明会や教職員会議では著作権法の原則に従う必要がある。「『授業』かどうかを判別するには、『教員⇆児童・生徒』の活動かを考えます」

引用元「改正著作権法第35条運用指針 (令和3(2021)年度版) 2020年12月 著作物の教育利用に関する関係者フォーラム 」

「例えば参考書籍や新聞記事の一部をコピーした場合、授業で児童・生徒に配るのは問題ありません。しかし同じものを、無許諾のまま教職員会議や保護者会の資料として配ると著作権侵害です。『その著作物を見るのが誰か』を意識してみてください」

【2023年2月10日17時50分追記】学校通信や学級通信について、「学校内で紙のみでの配布であれば、無許諾・無償でのイラスト使用が認められる」と受け取れる表現があったため、該当部分を訂正しました。学校通信や学級通信は原則として「授業」には当たらず 、 「著作権の例外」に 該当しないため 、配布方法にかかわらず、無許諾・無償でイラストや写真を掲載した場合は著作権侵害になる可能性があります。

「オンライン授業」「行事配信」は条件あり

ICT教育の推進に伴い、オンライン授業や行事配信も増えた。ところが、実はこれらは著作権法の定める「授業」に含まれない。本来ならば、著作物の使用には著作者の許諾や使用料の支払いが必要だ。

しかし、オンライン授業や行事配信のたびに許諾を取って使用料を支払うのではあまりに煩雑で非現実的。そこで2021年度に開始されたのが、「授業目的公衆送信補償金制度」だ。小学生は1人当たり年額120円、中学生は180円、高校生は420円、大学生は720円の補償金をSARTRAS(サートラス:一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会)に支払うことで、許諾不要で使用することが可能になった。

「現在、SARTRASに補償金を支払っている学校は約8割に上ります。しかし実際の支払いは各自治体の教育委員会や学校法人などがまとめて行うため、現場の先生方や子どもがこの制度を知らない可能性も大いにあります。よくある誤解が、オンライン授業や行事配信も『授業』の例外規定で著作物の無許諾・無償使用ができるというもの。対価を支払えばこそ配信が可能であることを把握し、私生活でまねをしないよう児童・生徒にも伝えていかなくてはなりません」

教員向けの講習なども数多く実施している原口氏によると、著作物の扱いに関して、次のようなケースでの対応について質問を受けることが多いという。

「今の時代、画面キャプチャー(スクリーンショット)をSNSにアップすることは誰でも簡単にできます。技術的に可能であることは事実ですが、著作権や個人情報保護の観点で禁止なのだと理解してもらう必要があります」

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