管理費UPは不可避?マンション住民襲う値上げ 駐車場の契約数減、管理委託費アップも影響

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電気料金を含めたコスト削減には、共用設備のスリム化も一案であろう。

【要因1】でふれた械式駐車場の減築もその1つで、電気代カットにもつながる。例えば共用部分のエアコンを一部廃止し、全体の台数を減らすことができれば、電気代はもちろんフィルター清掃代、メンテナンス代の削減にもつなげられる。

1つ注意したいのは、電力自由化に伴う新電力事業者への切り替えだ。一時、電気料金削減の有力手段として注目されていた新電力だが、現状は東京電力など既存の電力会社の価格を上回っており、急な事業撤退を行う会社も散見される。メリットデメリットを含め、慎重に判断することが大切だ。

管理委託費の値上げ要請は慎重に判断したい

最後は、【要因3】人件費高騰などによる管理委託費の値上げについて。管理会社から要請を受けた場合、「それなら管理会社を変えよう」と考える管理組合もあるかもしれない。けれどもこれほど物価が高騰する今、管理会社の値上げ要請やその理由、金額は決して無理な要求でないと理解しておきたい。

当社にも「管理会社を見直したい」との相談が寄せられるケースはある。そこで現在の管理会社の管理委託費をベースに数社に見積もりを依頼した結果、スタッフ系の業務費については新たな候補となる会社のほうが高額になる場合も少なくないのだ。つまり、それほど人件費が高騰しているのは事実というわけである。

そこで値上げ要請を受け入れ、値上げやむなしというような形になった場合には、仕様見直しによる余剰部分の削減にも踏み込んでいく必要がある。例えば人員の勤務時間短縮や人員数の削減なども検討せざるを得ない。

これからの管理組合の運営においては、分譲当初設定のままの共用設備や管理費をベースに考えているだけでは、もはや続かないという局面に突入しつつある。そしてそれは、区分所有者であるマンションの居住者一人一人が「自分ごと」として考えていかなければならないということでもある。

管理費負担や共用施設の管理そのものが、中古市場での足かせとなり、場合によっては「資産価値」にも関わってくることになる。マンションの区分所有者同士が協力し、管理組合として「譲れること、譲れないこと」を含めたスタンスを打ち立て、自分たちの住まいであるマンションを守っていかなければならない時代がきている。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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