2022年も、大手企業の不正が発覚した。対応や背景を分析し、問題点に迫る。大手繊維メーカーの東レは長年、樹脂製品の検査不正に手を染めていた。不正問題の専門家からは「不正への対応レベルが非常に低い」という指摘があがる。その一方で、他のメーカーは東レのケースから大いに教訓にすべきことがあるという。
2022年1月に樹脂製品の検査不正が明らかになった東レは、原因究明や再発防止を掲げて外部委員会を設置した。その外部委がまとめた調査報告書の表紙には、弁護士3人(藤田昇三委員長、松尾眞委員、永井敏雄委員)の名前と印鑑がある。東レへの提出日である「2022年4月8日」という日付を除けば、“あの”調査報告書と全く同じだ。
“あの”とは、2017年11月に発覚した、子会社の東レハイブリッドコード(以下THC)による、タイヤ補強材などの品質データ改ざんだ。THCの社長が引責辞任する事態にまで発展した。東レはこの時も外部委を設けて調査報告書の作成を依頼した。そこで原因究明や再発防止の提言を担当したのも、藤田委員長、松尾委員、永井委員の3人だった。
彼らにとって、東レは調査報告書のリピーターだ。まずここに、疑念が生じる。元芝浦工業大学教授で不正問題に詳しい安岡孝司氏は、「企業不正の最大の受益者は、調査報告などに携わる弁護士らだ」と語る。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら