外からは見えづらい企業の不正を明るみにするカギは、内部告発だ。日本では2022年6月、内部告発者の保護を強化した「改正公益通報者保護法」が施行された。だが、アメリカの内部告発に関する制度と比べ、大きく劣っている。
ホイッスルブロワー。日本ではあまり聞きなれない言葉だが、英語圏では内部告発者のことをこのように呼ぶ。警笛(ホイッスル)を吹く人(ブロワー)という意味だ。日本ではともすれば「密告者」「裏切り者」の語感のある内部告発者だが、英語では「勇気のある者」を連想させる言葉が使われている。
言葉上での配慮だけではない。アメリカではこのホイッスルブロワーになれば、一獲千金を狙える大きなチャンスが用意されている。
例えば、2017年6月に経営破綻したエアバッグ大手のタカタ。欠陥商品で多数の死者を出し、全米規模のリコール問題になる一大スキャンダルへと発展した。その発覚や解明には、元従業員3人による運輸委員会への通報や、司法省や連邦捜査局(FBI)への捜査協力が大きな役割を果たした。
アメリカでは大きな企業不正が起きた場合、所管の当局が法令に基づいて企業に巨額の罰金を科す。そのうえで、罰金のうち10~30%をホイッスルブロワーに報奨金として分配するという制度がある。
タカタでは170万ドルの報奨金
タカタのケースでは、アメリカ政府が同社に課した罰金のうち170万ドル(当時の為替相場で約1億9000万円)が、元従業員3人への報奨金にあてられた。
国内外のガバナンス問題に詳しい大和総研の鈴木裕主席研究員は、「アメリカでは、こうしたホイッスルブロワーへの報奨金の仕組みがあるので、不正を見つけたら『これは得になる』と思って進んで告発する人もいる」と話す。
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