社会問題伝えるたかまつなな、祈るだけの「日本の平和教育」は転換期と語る訳 平和はつくるもの、ウクライナ取材を教材に

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日本は、子どもを守るべき存在と考えているからだと思います。失敗させないように管理して育てている。ヨーロッパではいろいろなことに挑戦させ、もちろん失敗もするのですが、失敗を許容する懐の深さがあって、生徒を信頼していると感じました。一方、日本はミスしたときのリスク管理のほうが大きくなってしまっている。まずは「子どもたちもできる」と信頼すること。民主主義は信頼から生まれます。その点、日本の民主主義はまだまだ脆弱だと感じました。

――もっと政治や平和について考えるようになるためには、どうすればいいでしょう。

子どもの頃から、平和をつくるために何ができるか考える教育を行っていくべきだと思います。

例えば、国際社会・国・個人ができることは何か、クラスでアイデアを出してみたらどうでしょうか。貧困は紛争のリスクが高まるから、経済成長することが大事、ODAなどで困っている国を助けるなど、さまざまなアイデアが出てくるかもしれません。さらに、国の中で貧困や差別を生み出さないためにはどうすればよいか、どんなルールがあるとよいかなどについて議論する。ほかにも、他国と仲良くする外交をどうすべきか、ほかの国から攻められないため、自国を守るために防衛力をどうすればいいかなど議論を深めることもできます。

私たち個人にだってできることはあると考えることも大事です。異なる価値観の人の文化や歴史を学ぶことで差別をなくす、安全保障や平和について考えている政治家を選挙で選ぶ、情報戦が繰り広げられる中、間違った情報を拡散しないことも大切だと伝えられると思います。ここに挙げたのはほんの一例で、ほかにもたくさんあると思います。

ウクライナ取材を動画にまとめて平和学習の教材に

――たかまつさんは笑いで社会問題を伝えようと、フェリス女学院卒のお嬢様芸人としても活躍されています。

今の自分は大学よりも中高のアイデンティティーのほうが強いと感じています。とくに宗教教育に影響されたと。何が正義なのか考えたり、2泊3日の修養会では生きる意味を友達と本気で話し合ったりしました。社会問題についても、大人の目を気にしたり忖度(そんたく)したりしないで、本音を言う空気感がありました。青春時代のような悩みの多い時期に本気で議論をする意義は大きい。中高時代に自分の中のストッパーがなくなって、それがジャーナリストとしての資質につながっていると思います。

日本においても、英国の授業で見たような「社会を変えるためにはこんな手法があるんだよ」という教育ができるといいですよね。署名活動も市民活動も選挙も、日本の子どもたちも授業で習っていますが、社会を変えることができるなんて思っていない。「何かを変えるにはこうすればいいんだ」という感覚知になるまでには時間がかかるんです。

そういう教育を早くからしていると、想像もしないアイデアが出てきます。料理の仕方を教えればおいしい料理がつくれるようになるのと同じで、子どもたちにも方法を教えて、あとは任せればいい。こうした考え方が、平和学習にも大事だと考えています。

――ウクライナでの取材を終えて、周囲からはどのような反応がありましたか。

平和学習を目的に取材しているジャーナリストは聞いたことがないので、新しい視点だと評価してくださる人もいます。心ない言葉もありました。親ロシアの方からは誹謗中傷を受けたり、もっと激しい戦闘地へ行って取材しろとか。いろいろな声があるものです。

ウクライナでの取材を動画にまとめて教材にする予定
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