都立高校入試に「中学校英語スピーキングテスト」活用を強行する危うさ 目前でESAT-J中止求めて反対意見が高まる訳
「ESAT-Jは、ベネッセが実施しているスコア型英語4技能検定『GTEC』と構成がそっくりです。日常的にGTECを受けている受験生のほうが慣れているのでスコアも上がりますが、肝心な中学校英語をスピーキングテスト対策で終わらせていいのか。それで将来英語が使えるようになるのか……定型表現の暗記だけで話せるようになるほど外国語は甘くはありません。中学校では基礎づくりがかえって早道、高校・大学と読んで書いて聞いて語彙力をつけて表現力を磨く努力をしなければ話す力は身に付きません」
たかが1回のスピーキングテストのための対策で、どれだけ話す力が高まるのかということだろう。「話す」力と「聞く」「読む」「書く」力は相関していると鳥飼氏は話す。しかも個人が力試しで受けるのと違って、入試に関わるスピーキングテストだ。不公平を招く可能性があるのなら、今年は「聞く」「読む」「書く」力を測るペーパーテストだけでも十分ではないかという指摘はもっともではないだろうか。
説明少なく、保護者からは悲鳴と怒りの声
一方、保護者はどのように考えているのか。「都立高校入試英語スピーキングテストに反対する保護者の会」で署名活動や街宣などに参加する中3の子どもを持つ保護者はこう話す。
「ESAT-Jについて学校から知らされたのは、今年4月のプリントが最初です。5月の進路説明会では学校に説明を求めましたが、詳しいことはわからないと。学校の先生、区や市の担当者も中身がわからないんです。ただ、校長先生を通じて都教委に質問ができると聞き、質問を送りましたが11月になった今も回答はありません」

(撮影:東洋経済)
都教委の誠実さに欠ける対応に憤りを感じながらも、都立高校が第1志望で、子どもの受験に必要と言われれば申し込みをせざるをえない。10月に入ってから学校の授業内でESAT-Jに向けた対策にも取り組んでいるというが、入試が刻々と迫る大事な時期に「本来学ぶべき内容に代えて特殊テスト対策をしている」と訴える。さらに中2の子どもを持つ保護者も続く。

(撮影:東洋経済)
「普段の授業でスピーキング力は評価されていて、成績に反映されたものが調査書になっています。わざわざ2月の筆記試験とは別の日にスピーキングテストだけやる必要があるのか。それもアチーブメントテスト(学習達成度測定テスト )です。入試制度に不受験者が存在することが問題なうえに、実施スケジュールなどの問題があるにもかかわらず、何でこんなに必死になって都教委が進めようとするのかわかりません」
ESAT-Jの結果が通知されるタイミングもぎりぎりだ。都立高校の入試は2月21日に予定されているが、生徒には1月中旬、学校には1月末に結果が届くとされている。教員はそこから調査書に点数を反映しなければならないのと、もしもESAT-Jの結果が悪かった場合は、「生徒に結果が来た時点で学校に相談してほしいと言われている。出願期間が2月1〜7日で、受験校変更に間に合うのか心配」と前出の中3生の保護者は話す。