受験、内申点…日本初の「イエナプラン中学」大日向中学校が挑む課題 小学校と連携し、9年間を見通して学力向上へ

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学力向上も外せない「150年変わらずにきた教育への挑戦」

大日向小中はイエナプラン教育の方針が注目されがちだが、学校として「学力を上げることは外すことのできないターゲット」だと長沼氏は言う。

「まずは日本でもイエナプラン教育がやれるんだという実績を示すことは最重要課題です。お隣にある大日向小とも相談しながら、9年間を見通したカリキュラムを作りたいと考えています」

「しなければならない課題」だけでなく、「自分自身が選択した内容」を自立的に学ぶブロックアワーなら、一人ひとりの理解度に応じて自由に進んだり戻ったりすることができる。連携の密な小中一貫体制でそうした学びを展開することによって、より柔軟でシームレスな個別最適化を目指している。長沼氏は小学校の教員を「3年先を歩く先輩」と称し、カリキュラム作りや個々の学習などについても小中間で共有する。日常の指導でも、小学校の教員が休むときには中学の教員がヘルプに入ることもあるという。

「理解が早く先に進む子どもをやっかんだり、後に戻って復習する子どもを笑ったりするような空気もありません。学校の方針に共感してくれている家庭ばかりだからか、多様性を認め合う力はすでに子どもたちの中に根付いているようです」

それぞれの子どもに異なる学びを提供するとなると、教員の負担は大きくなる。だが大日向小中の教員は「みんなとてもいい雰囲気で、気概と信念を持って取り組んでいます」と長沼氏は語る。その根底にはやはり、イエナプラン教育の精神があると説明する。

「私が大日向中でテーマにしているのは『抑圧からの解放』です。子どもがいかに主体的に『私らしさ』を体現することができるか、人間らしく抑圧されずにいることができるか。そのためには平和主義的な対話が欠かせないし、子どもたちにそう教えるには教員も抑圧されずにいなければなりません。だから教員同士の関係性もとても重視しています。子どもたちだけでなく教員や保護者も協働できる環境では、私もほかの先生方も、とても自然体でいられるのです」

イエナプラン教育の精神にのっとり、同校では教員間でも対話を心がけている。さらにいいところは褒め合い、互いの自己有用感を高めているという。

「異年齢の子どもでクラスを形成するなど、イエナプランの方針はいわば150年変わらずにきた日本の教育への挑戦です。本校はまだ新しく現在進行形の学校ですが、そもそも教育とは、つねによりよい完成形を目指しながら進んでいくものだと思います。子どもや保護者、地域の方とも一体になって試行錯誤しながら、理想とする姿を探っていきたいと考えています」

(文:鈴木絢子、写真:すべて長沼豊氏提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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