日本とデンマーク「似て非なる」インクルーシブ教育、共に学ぶことの真の価値 「分離された特別支援教育」は何が問題か
今、特別支援学校在籍者数は増え続け、地域の学校の特別支援学級・在籍児童数も増え続けています。一方で、学校現場はとても忙しく、OECDの調査でも日本の小中学校の教師の労働時間数は群を抜いた長さで先進国トップとなっています。その中で現場の事情を考慮に入れず、教師の気持ちを理解せず、特別支援の対応のみを求めても、現場はうまく機能しないかもしれません。
通常級の先生たちと話をしていると、特別な支援を要する子に対して、何もしないことがいいと思っているわけではありません。障害のある子どもたちをどう包摂していいのか、具体的なイメージがつかめていないのです。ただ一緒に教室にいるだけでは、よい出会いとはならずにむしろ差別意識を深めてしまうのではないかと心配しています。逆に言えば、「よい出会い」を設計する方法やスキルがあるなら、それを知りたいと思っているのです。
そのようなときに、エグモント・ホイスコーレンのように「楽しさ」でつながるような場をつくっていくことも大切なのではないかと夏のデンマーク訪問で強く感じました。日本は遠足、修学旅行、運動会などの特別活動が盛んで、「総合的な学習の時間」「総合的な探究の時間」もあります。すでにあるこうした仕組みを使って、意味のあるよい出会いをつくっていくことも有効かもしれません。
すべての子たちには価値があり、お互いに学び合える、そういう信念に基づいた学校設計がされていくべきだし、私たちもそういう社会・教育に向けて一歩一歩、歩んでいきたいと思っています。

こたえのない学校 代表理事
慶應義塾大学法学部政治学科卒業。米コーネル大学大学院修士(公共政策学)。日本政策金融公庫、ソニーなどで海外アライアンス、新規事業立ち上げなどを経験。仕事をしながら子育てをする中で「探究する学び」に出合い、2014年「こたえのない学校」を設立。小学生向けの探究型キャリアプログラムを実施するほか、16年から学校教育に携わる教師と学校外で教育に携わる多様な大人が出会い、チームで探究プロジェクトを実施する「Learning Creator’s Lab」を主宰。18年、経済産業省「未来の教室」事業の採択を受け、世界屈指のプロジェクト型学習を行う「High Tech High」の教育プログラムの日本導入に携わる。著書に『「探究」する学びをつくる』(平凡社)などがある
(注記のない写真:すべて藤原氏提供)
執筆:こたえのない学校 代表理事 藤原さと
東洋経済education × ICT編集部
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