世界で最初の先物取引市場は、江戸時代の大坂で生まれた堂島米市場だと言われている。筆者自身、これにひかれて堂島米市場の研究を始めたが、当初は商品先物市場、つまり将来時点に売買する米の価格を「今」約定しておく取引をする市場と思っていた。
しかし研究を進めるうちに、この理解が適切でないことがわかってきた。商品先物取引では、例えばオレンジなどの現物をXドルでYトン買う、という契約を「今」しておけば、指定期日(満期日)に契約を実行して現物を受け取れる。だが堂島米市場では、原則として、すべての先物取引は満期日までに反対売買によって清算される必要があり、現物(米ないしそれを表象する証券)を受け取ることはできない設計になっていた。
では何を取引しているのか。結論から言えば指数であった。日経平均株価指数とか、ダウ・ジョーンズ工業株価平均などと同じで、市場参加者が作り出した「米価指数」を取引したのが、堂島米市場の先物取引であり、実物のやり取りは想定されていなかった。
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