自らも発言し、議論に飛び込んで探究学習を深める「ジェネレーター」とは 創造的で軽やかな教員が子どもの思考力を育む

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2つ目のポイントは、アイデアを出すときには「くだらないことでも、思いついたことを発言してしまうこと」だ。「イマイチだと思っても、思いついたら、『イマイチだけど……』と前置きしながら言ってみるのです。子どもたちは『えー⁉』などと突っ込みやすくなるし、『そういうレベルのアイデアでもいいんだ』と肩の力が抜けて、発言することへのハードルも下がります。大人ほど、自分の中で評価をし、すばらしいアイデアでないと発言できないと思ってしまいがちです。そうなると場が動かなくなる。そうではなく、ひとまず場に出してみて『みんなで考える』のです」

従来型の授業を経験してきた子どもたちは、教員が答えを知っているものだと思っている。だが答えを与えられるのではなく、自分たちで考えることこそが探究学習の醍醐味だ。

限られた時間でパワフルな議論を起こし、自主的な学びを

3つ目として井庭氏がよく実践しているのは、「例えば……」と、具体例を示してみることだ。ファシリテーターは「例」であっても具体的な発言をしないが、ジェネレーターは違う。意見を出し惜しみせず、子どもたちと共によりよい結果に向かうために最善を尽くしていい。

4つ目と5つ目は、子どもと教員の垣根に関わることだ。完全に対称な関係を築くことは不可能だが、有意義な生成のスパイラルを起こすためには「発想の連鎖を阻害しない程度のフラットさ」が欠かせないと語る。

「4つ目のポイントは、わからないことはわからないと言うこと。先生にも知らないことがあるのだと、子どもたちに弱みを見せてしまいましょう。大人でも知らないことがあるのは当然なことだ、と。そして5つめのポイントは、普段から子どもとワイワイ話したり、いろいろなことが言い合えたりする関係性をつくっておくことです」

こうした関係構築の中で、「教員の言葉がつねに答えではない」ということを、子どもたちに浸透させていくといいだろう。井庭氏も「教員の発言で子どもたちが黙り込んでしまうような関係では、創造的な場をジェネレートすることはできません。かたくない、やわらかな場づくりが重要です」と注意を促す。

評価についての考え方も更新される。井庭氏は「私は目の前の学生の変化や振る舞い、チームへどう貢献しているかなどを見ています」と話す。

「個人の振り返りレポートを提出してもらってじっくり読んだり、長いスパンでの成長を感じ取ったりできるのは、内側に入り近くで継続的に関われるからこそのアドバンテージです」

活動の内側に入り、共に悩むのがジェネレーターだ(写真中央が井庭氏)

井庭氏が慶應義塾大で担当している研究室では、学生がいくつかのグループに分かれており、つねに複数のプロジェクトが同時進行している。現在は「中学校でのクリエイティブ・ラーニングとパターン・ランゲージ実践研究」「『ともに生きることば』を用いた高齢者ケア研修の実践研究」など7つのグループが活動しているため、それぞれに井庭氏がジェネレーターとして参加できる時間はおのずと限られてくる。だが、それがちょうどいいのだという。

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