「金融政策の変更」に踏み切らない黒田日銀の真意 三菱UFJモルガン・スタンレーの石井氏に聞く
9日22日、金融政策決定会合で政策方針を示す日本銀行。円安圧力が高まる中、現行の大規模緩和の維持を予想する声が多いが、どのような内容になるのか。決定会合を先取りして日銀の真意を読み解く。
――日銀の政策見通しについて予想を行っています。それについて教えてください。
当社では、2024年度中まで向こう2年半のシナリオを描いているが、結論を先取りすると、黒田東彦総裁の体制下で日本銀行の政策修正はない、また、ポスト黒田体制(黒田総裁退任の2023年4月以降)になっても政策修正や金融緩和縮小の可能性は低いと見込んでいる。そのため、長短金利は引き続きこれまでのレンジ内に収まるというのが、われわれのメインシナリオだ。
マーケットで政策修正への警戒感が高まるときは、長期金利(10年債)は、最近のように0.2〜0.25%で強含みとなり、警戒感が後退すれば0.1〜0.2%のレンジへ切り下がるイメージだ。国債売買の主戦場となっている20年債については0.7~1%のレンジを予想している。
日本銀行の政策修正「4つのシナリオ」
――マーケットでは、依然として日銀の政策修正観測が燻り続けています。それについてはどう見ていますか。
10年に及ぶ黒田日銀体制の下、大規模金融緩和は度重なるパッチワークによってかなり複雑なものとなっている。そのため、一口に政策修正と言ってもやり方はいろいろとある。年初来、取り沙汰されている政策修正観測は主に次の4つだ。
第1に長短利上げ(短期政策金利のマイナス金利解除と長期金利ターゲットの引き上げ)、第2に長期金利ターゲットの対象年限の短期化または撤廃、第3に長期金利の許容変動幅の一段の拡大、第4に政策金利のフォワードガイダンス(中央銀行が前もって金融政策の先行きについて示す指針)の修正、具体的には利下げバイアスの削除だ。
――石井さんは、それらが行われる可能性は低いと予想されています。どのような理由からでしょうか。
第1の長短利上げの可能性が低い理由は、端的に言って、日銀の「持続的な2%の物価上昇率目標」の実現にメドが立たないからだ。
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