「日本には、起業家が少ない」その根本的な原因が、教育にあるといえる理由 「人と違う、失敗を奨励する」ことが重要な訳
日本では今も、いい大学から大企業へ就職するという価値観が大勢を占めています。しかし、そんな価値観が支配的な社会からはなかなか起業家は輩出されません。皆と違うことをしてみよう。合理的に考えて上手にリスクを取ってみよう。そんな発想のアニマルスピリッツを育むことが根本的に重要です。
――朝倉さんも大勢の人とは異なる経歴を歩んできました。
私は中学卒業後、騎手になりたいと思い、普通の高校には行かず、オーストラリアの競馬騎手養成学校に入学しました。周りの同級生からは「なぜ高校に行かないの?」と言われましたが、私からすれば「なぜ高校に行かなければならないの?」という受け止め方でした。高校に行くにしても自分なりの理由があって然るべきじゃないかと。進路というのは、高校を出て、その先何がしたいのか。その思い、気持ち、考えがあったうえで、能動的に選ぶものだと私は考えていたのです。
しかし、多くの人たちは高校に行くことが所与の条件だと思っている。私にはそれが自分にとってよい選択肢とは思えませんでした。一度立ち止まって、自分で考えてみることが必要だと思ったのです。

(写真:朝倉氏提供)
――私たちから見れば、非常に勇気のある決断だと思います。朝倉さん自身は、なぜ人と違うことを選択できたのでしょうか。
父が自営業をしていたこともあり、そこから影響を受けているのかもしれません。父の口癖は「頭を使って」や、「自分はどうしたいと思うのか?」でした。父から何か注意されるときは言葉の端々に「自分の頭で考えろ」というメッセージが込められていたと思います。父は人と違うほうが面白い、自分で苦労してお金を稼ぐことをよしとする考えの持ち主でした。
――お父さんの影響も大きかったのですね。先ほど触れられた「リスクを取る」という考え方については、いかがでしょうか。
日本では、リスクについて非常に否定的で危ないもののように考えますが、本来リスクとは行動や決断したときの結果の良しあしの振れ幅のことを指します。つまり、結果がいいにせよ悪いにせよ、リスクを取らなければリターンも何も得られないのです。
また、日本では失敗に対する拒否感は根強いものがあります。しかし、本来リスクは、低減する方法がいくらでもあるのです。今成功している起業家たちも、最初から成功したわけではない。何度も失敗をして、経験からリスクを低減する方法を学んでいます。日本の教育では、人と違うことは否定されるし、あらかじめ存在する正解に、いかにしてミスなく効率的にたどり着くかを求められる。加えて、自分で考えるのではなく、先生が言ったことを守るように言い聞かされる。こんな価値観を幼い頃から刷り込まれて、大人になってから「クリエーティブに自分で考えて実践しろ」と言われても、できるはずがありません。リスクというものは、失敗したときの挽回策が想定できていれば、それほど恐れるものではありません。
例えば、競馬騎手養成学校に入るときも、親からは「高校を卒業してから行けばいい」と言われました。しかし、騎手は目指してもなれない可能性も高い。もし失敗したときにどうするのか。そのとき考えたのは、高校を卒業してからよりも、中学を卒業してすぐに行ったほうが進路変更がしやすいという点で、リスクを低減できるのではないかということでした。当時から大学を受験するには相当の勉強が必要だと理解していました。仮に高校卒業後に騎手を目指して失敗したら、そこから大学に入り直すのは難しい。けれども中学を卒業してすぐに目指せば、失敗しても高校生活に該当する3年間を勉強に充てれば大学進学も難しくない。早めに始めたほうが、失敗したときの選択肢も広がると考えたのです。