一方、「ゲームをいつまでやる予定?」と聞いたら、「ここをセーブするまで」と答えるかもしれない。そうしたら「それにはどのくらい時間がかかるのか」「宿題はいつやる予定なのか」を聞くことができます。
さらに、「寝る時間は守ってほしいから、それまでに宿題を終わらせてほしい」と親のゴールイメージを伝えたら、子どももどうしたらいいか自分で考えるようになります。私も子育て中に子どもとの関係性が悪くなったときは、この2つをすっ飛ばして指示命令をしていたときだったので、このステップは大事だと思います。
1対多数の生徒を見ている先生が、一人ひとりの生徒のことをよく見て、知る・感じるということは、なかなか大変だと思いますが、意識するだけでも見える景色は変わってくるのではないでしょうか?
そしてナビゲートの仕方にもコツがあるようです。例えば、危なっかしく木登りする子どもに対して、皆さんだったら、どうしますか?
2. 落ちてケガするまで放っておく。あるいは手伝って登らせる。
3. 本人がケガをしないように登れるようになることをゴールに置いて、見本を見せる。登るコツや、危険なポイントを教える。注意深く見守りながらアドバイスする。
炭谷氏は、教育を次の3つに分けています。
学ぶ中身は文部科学省や教育委員会などが決める。教え方は、先生や親らが教え込む。
第2の教育「放任」
したいことは何をしてもいい。したくないことはしなくてもいい。自分でできないことは、手伝ってあげる。
第3の教育「自立」
学ぶ主体は自分であり、興味や好奇心に従い、自ら学ぶ内容や学び方を選択する。問題を人のせいにするのではなく、解決への行動を自ら起こす。ナビゲータは人が自立的に生きる力をつけることを支援するための手助けをする。
見ればおわかりのとおり、上の3つの接し方は、それぞれの教育の特徴を示しています。集団を統制するためには、第1の教育の考え方で禁止にするのがいちばん楽だし、危険も回避できそうだから、学校ではこの考え方をすることが多いのも致し方ないかもしれません。
しかし、ずっとそうしていたら、子どもは、チャレンジや失敗から学ぶという機会を奪われてしまい、受け身になってしまいます。子どもの探究サイクルを回すためには、3つ目、自立を促す関わり方をすることが大切なのです。
先生は忙しく、教科書を進めなければいけない、かつペーパーの学力を保障しなければいけないという現実の中で、とても探究学習なんてやっていられないというのが本音かもしれません。しかし、今回の学習指導要領が目指しているのは、子どもの主体性や自ら考える力を伸ばすことのはず。
蓑手さんと共にHILLOCKを立ち上げた五木田洋平氏も、探究ナビ講座を受講した一人ですが、「教員の仕事を『成長に寄与する人』と考えている人であれば探究ナビ講座は新しい視点を提示してくれると思う。 というのも学校が用意する教員研修や先輩から後輩への指導では主に『どう教えるか』といった観点が多いですが、『受け持っている子をどう見ているか、どう見るべきか』といった視点は学校の研修では少ないから」と言います。
この記事を読んでくださっている先生は、ご自身の仕事をどう捉えていますか?
「教育とは子どもの適性を無視してあらゆる情報を教え込もうとすることではなく、子どもが本来持っている可能性を存分に発揮するためにこそ行われるべきものだ」。これは、行動遺伝学を専門にする教育学者の安藤寿康氏の言葉です。
時代の変化とともに、教育の役割は変わっていきます。ICT化の文脈で個別最適化という言葉も生まれていますが、考えようによっては、今回の教育改革は、教育の本質に近づこうとしている変化だと言えるのかもしれません。